防水性を“過少申告”する
奥ゆかしき国産ダイバーズ

 時計に限らず、どんな製品であっても、必ずそのモノだけのストーリーのようなものがあるだろう。例えば、それが作られた経緯であったり、開発時の秘話であったり、はたまた意外な蘊蓄であったり……。そういった思わず語りたくなるエピソードがあるからこそ、モノを所有する悦びは増す。なかでも歴史の長い定番時計は、まさにその宝庫なのだ。

 1965年に国産初のダイバーズとして誕生したセイコーダイバーズ。当初150m防水からスタートし、2年後には300m、‘75年には600mと、わずか10年で防水性能を4倍に向上させた。この600mダイバーズでは、チタンケースの外側に“外胴プロテクター”という独自開発のカバーを取り付けて、高い防水性と耐久性を確保。‘83年、これをアップデートしたクオーツ式の600mダイバーズは、潜水調査船「しんかい2000」でのテストによって水深1062mまでの耐圧性能が実証された。

 さらに‘86年、セラミック製の外胴プロテクターを取り入れたダイバーズは、ついに1000m防水を達成。同じように2014年、無人探査機「かいこう7000Ⅱ」にて実施されたテストでは、機械式が4299m、クオーツが3284mまで動き続けた。1000mダイバーズと謳いながら、じつはその3~4倍もの深さまで耐える性能を備えていたわけである。誠実で控えめな日本のメーカーらしい、なんとも奥ゆかしいエピソードではないか。

 このように“語れる”エピソードをもつモデルは、時計の世界にはゴマンと存在している。時計とともにそれらも仕入れて、さりげなく語れば注目の的に!