旭酒造の桜井博志会長旭酒造の桜井博志会長(旭酒造提供)

純米大吟醸「獺祭」を世界的なブランドに育てあげた旭酒造。2023年にはアメリカ・ニューヨーク州に酒蔵を建設し、米国ブランドの純米大吟醸「DASSAI BLUE」の製造に取り組む。自ら現地に移住して陣頭指揮を執る桜井博志会長に、「リーダーが絶対にやってはいけないこと」を聞いた。(旭酒造代表取締役会長 桜井博志、構成/宮下舞子)

トラブルが起こらないなら
リーダーなんて要らない

――想定外のトラブルが起こった時、リーダーはどう対応すべきでしょうか?

 トラブルが起こるからこそリーダーが必要なのです。逆に言えば、トラブルが起こらないならばリーダーなんて要りません。

 2018年の西日本豪雨では本社蔵が3日間半も停電しました。仕込み中のタンクにあった50万リットルの純米大吟醸「獺祭」は温度管理ができず、通常の「獺祭」として出荷できなくなりました。その時、「これに対処するのが私の仕事だ」と思いました。日頃、問題なく進んでいるところに私の仕事はありません。

 実際には、トラブルの想定なんてできません。もちろんなるべく準備はしますが、完璧な備えはできません。必ず、事故やトラブルは起こってしまいます。

 例えば、コロナ禍だった2020年の初頭は、「獺祭」の海外での売り上げは1割くらいまで落ち込みました。免税店の売り上げもゼロになりました。国内の売り上げも半分くらいまで下がりました。自分たちに何か問題があったわけではなくても、このような状況は起きてしまいます。

 もう、淡々と対応していくしかないんですね。ですが、トラブル発生時のリーダーの心構えとして、ただ一つ、大事なことがあります。