岸田文雄首相脱炭素化やウクライナ戦争で日本の電力は価格高騰と需給ひっ迫の「二重の危機」。岸田首相は原発新増設の検討を指示したが、世界とずれた古色蒼然たる発想だ Photo:Anadolu Agency/gettyimages

価格高騰と需給ひっ迫のダブルパンチ
岸田首相は原発新増設検討を指示

 電力に価格高騰と需給のひっ迫の「二重の危機」が押し寄せている。

 価格の高騰は、世界的な脱炭素化の流れの中、火力発電所などの停止や休止やコロナ禍からの経済回復、そしてロシアのウクライナ侵攻による資源価格急騰が重なったためだ。

 一方で需給ひっ迫は、大規模停電が起きた際に東日本と西日本の電力融通が十分にできないなど、需要の急変動に供給を柔軟に調整する仕組みの整備が遅れているという日本独自の要因が大きい。

 岸田文雄首相は8月24日、脱炭素化の実現を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で、既存原発の最大限の活用や次世代原発の開発・建設など、原発新増設の検討を指示し従来の「依存度の低減」から建設推進へと再びかじを切ろうとしているようにみえる。

 だが「原発回帰」が危機打開に有効なのか、正しい道なのかは冷静に考える必要がある。