海外不動産、ドローンレンタル、足場節税……。これまで富裕層の間で好評だった節税術は、軒並み規制が強化されている。そして2024年1月には、ついにタワマン節税にも税制改正でメスが入った。今後富裕層が採るべき節税術は何か。特集『富裕層 億万長者の実像』の#8では、不動産投資のプロが、総額1億円の不動産投資をした場合の節税効果を5年分シミュレーションし、その効果を検証する。(大和財託代表取締役CEO 藤原正明)
次々に封じられる富裕層の節税策
不動産投資の減価償却節税を実額試算
富裕層の節税手法に今、かつてない逆風が吹いている。
最近の事例だけでも、工事現場の足場リース、ドローンレンタルなど多くの節税術が封じられてきた。ブームになった節税術は、今やそのほとんどが立ち消えとなっている。
そんな中、2024年1月には富裕層の人気を博していた「タワマン節税」にまでメスが入った。税の公平性の観点から、市場での価値と相続税評価額の間に大きな開きがある物件は、市場価格の60%を相続税評価額とする制度が既に始まっている。「不動産投資による節税も使えなくなった」と悲嘆する声まで上がっている。
しかし、ここには大きな誤解がある。タワマン節税の封じ込めは区分所有のマンション限定の話であり、1棟のアパート・マンションではいまだ封じられていないからだ。つまり税制改正された今でも、1棟物のアパート・マンションによる相続税対策は健在である。
さらに、同じく富裕層に人気だった海外不動産投資も、既に封じられた節税術の一つだ。
というのも、20年度の税制改正によって、海外不動産の減価償却費計上による損益通算ができなくなったのだ。海外不動産を保有する一方で国内の税制を適用し、減価償却費を計上するスキームも封じられたわけだ。
このような背景から、今まさに富裕層の注目を集めているのが国内不動産の投資だ。海外不動産と違い、国内不動産であれば今もなお減価償却費の経費計上が可能だからだ。
では、不動産投資による節税効果はどれほど得られるのか。次ページでは、耐用年数を超えた軽量鉄骨造の中古アパート1棟を総額1億円で取得し、5年間の保有中に減価償却によって得られる節税額とキャッシュフロー(CF)をシミュレーションした。不動産売却時の税負担分を含めた最終収支を見れば、不動産投資が富裕層にとって有利になるケースが多いことも分かるだろう。