原油をはじめとするエネルギーや小麦など穀物の価格上昇で、国内需要のほとんどを輸入に頼る日本の経常収支は急速に悪化している。経常収支の悪化がさらなる円安を招くという、負のスパイラルに陥るリスクが高まっている。特集『午後10時の日本経済 激変!為替・株価・物価』(全8回)の#3では、日本の経常収支動向について識者の見方を紹介する。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
経常収支の悪化で通用
しなくなった“リスクオフの円高”
ロシアのウクライナ侵攻で、通用しなくなった為替相場のセオリーがある。
それは、“リスクオフの円高”である。なぜ通用しなくなったのか。
これまではリスクオフ、つまり、投資家がリスクを取りたがらない、回避しようという状態になったときに、円が買われていた。その背景には、日本が世界最大の対外純資産を持つ国であり、経常収支が黒字であるということがあった。
経常収支が黒字ということは、通常の経済活動をしていれば日本にお金が入ってくるということだ。経常収支が赤字でお金が出ていく国の通貨に比べれば、リスクが小さいと判断するのは当然といえる。
ウクライナ侵攻後、円安が進んだことからも分かるように、今回、リスクオフの円高は通用しなかったわけだが、その理由は経常収支の悪化であろう。下図を見てほしい。
2021年9月以降、前年同月と比べると経常収支が悪化していることが分かる。21年12月と22年1月は2カ月連続の赤字となった。2月は1兆6483億円の黒字となったものの、21年2月に比べ4割強も減少している。21年後半からのエネルギーなど資源価格の高騰が悪化の要因だ。
3月以降、ウクライナ危機で原油価格がさらに上昇、世界的な大穀倉地帯であるウクライナが戦場となったことで小麦価格も上がり、高止まりしている。当面は、経常収支の悪化が続くだろう。
円安の進行は円建てでの輸入金額増加をもたらし、経常収支をさらに悪化させる。それがさらなる円安要因になるという負のスパイラルに陥るリスクが高まっている。
この危うい“円安スパイラル”に歯止めはかかるのか。ダイヤモンド編集部は経常収支動向についてストラテジストへの緊急アンケートを実施。その回答を基に次ページで徹底検証する。