給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全ーー成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が3月15日に発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。

【成長株の見つけ方】IT関連の中で、さらに今後の伸びが期待できる分野とは?Photo: Adobe Stock

ITから大成長株が続出している

 ITビジネスは現在の最大の成長分野であり、株式市場でも数多くの成長企業が生まれています。

 代表的なのは、アメリカのGAFAと呼ばれる巨大IT企業、アルファベット(グーグル:GOOGL)、アップル(AAPL)、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック:META)、アマゾンドットコム(AMZN)の4社です。いずれもすさまじい業績拡大と株価上昇を実現し、これらの株を買って、大きく資産を増やした投資家が世界中で続出しました。

 下図はアップルの株価チャートです。15年間で株価は60倍に上昇しました。

 今後、IT関連業界ではAIや量子コンピューティングなどが本格的に普及し、新たな成長企業がいろいろと出てくることが予想されます。身近なサービスでそうした関連の成長企業を見つけたら、ぜひ投資を考えたいところです。

 現在、世界中のAIベンチャーを発掘し、投資して育成する事業に注力しているのがソフトバンクグループ(9984)です。日本企業がこの分野で存在感を高められるのかどうか、同社の動きには注目したいところです。

ネットショッピングの成長は、今後も続く

 IT関連でも特に成長している分野の1つは、ネットショッピングです。

 ネットショッピングのビジネスは、世界的に年率20%程度の高成長が続いています。ネットショッピングは日本国内でも年率10%程度のペースで成長を続け、2020年には市場規模が19兆円と10年間で2倍以上に拡大しています。

 消費に占めるネットショッピングの割合をEC化率といいますが、このEC化率は日本2022年時点でも、まだ7%程度。先行する米国が14%程度で、さらに拡大し続けていることを考えると、日本のEC化率はかなり大きな拡大余地がありそうです。

 ネットショッピングの世界的な王者は、アマゾンドットコムです。

 同社が日本に進出したのは2000年11月ですが、まずは書籍販売から始め、その後、販売品目を広げていきました。日本でECサイトをスタートした2000年から20年間で株価は約200倍になりました。

 日本の会社でネットショッピング大手である楽天グループ(4755)は、全国の中小小売店を集めたネットショッピングモール「楽天市場」の運営で成長が続いています。全国の特色ある中小小売店が楽天市場により、ビジネスチャンスを広げています。株価は2001年から14年間で50倍近くになりました。

 現在、同社は楽天市場にとどまらず、楽天証券や楽天カードなどの金融部門も収益の柱になり、さらに、楽天モバイルに社運を賭けて取り組んでいるところです。これが成功すれば、さらに飛躍できるかもしれません。

小泉秀希(こいずみ・ひでき)
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/