世界同時多発的に起きる流動的な生き方
「フラックス世代」
米ビジネス誌『ファストカンパニー』は、2012年に「フラックス世代」という特集を組みました。フラックス(flux)とは「流動」の意味で、不安定な状況を積極的に受け入れ、これまでのキャリアやビジネスモデル、常識などを修正しながら楽しむ人々のことだそうです。特定の年齢層で定義されるのではなく、心理学的な特性やものの考え方によって定義されるともいいます。
不確定な時代だからこそ、従来の価値観にとらわれない流動的な生き方は、世界中で静かに同時多発的に始まっています。自分の人生をつくるのは自分です。誰かがどこからかやって来て救ってくれる。そう思えば思うほど、残念ながらそんなことは起こらないのが人生でもあります。
しかし、自己決定には、困難さだけでなく喜びもあります。自分でイニシアティブを握って行う仕事や暮らしというのは、自分で決めたから誰にも言い訳できないし、妥協はできませんが、だからこそ、何ものにも代えがたい充実感をもたらしてくれます。
この本に登場したライフデザイナーたちも不安を抱えながら、「えいやっ!」と歩を進めてきたことだと思います。彼らは、それぞれに与えられた「設定条件」の中で、自分なりのライフデザインを夢中になって行い、振り返ると今があるということなのだと思うのです。
そして、各人に与えられた設定条件と同じように、生き方や働き方の問題や悩みもまたそれぞれ個別のものであり、万人への解もありません。他の誰かのようにやらなくてもいいのです。あなたはあなたの人生のタイミングで、あなたに与えられた設定条件の中、踏み出していくだけです。
確かに、一人一人の個は大きな組織に比べると弱い。でも、僕らは今や神経ニューロンのようにつながっています。弱い個であっても、僕らのネットワークは木の枝や血管のようにリアルタイムに伸びていく。やりようはいくらでもあります。
ソーシャルメディアもまた万能ではありません。ツールは時代によって入れ替わり、ノマドやシェア、コワーキングといった言葉も時代の流れとともに新しいものに変化していくでしょう。止めることのできない時間の流れの中で、フォーカスすべきは常にリアルの世界の、僕たちの暮らしの中にあります。
僕がライフデザイナーと呼んだ人々の暮らし方や働き方も、無数にある選択肢の一つです。情報に振り回されるのではなく、僕らは自分自身を「内観」し続け、与えられた環境の中でヒントを探し、自分で選んでいく。「あきらめずにしぶとく、しなやかに」です。(連載終了)
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米田智彦・著
『僕らの時代のライフデザイン』
自分でつくる自由でしなやかな働き方・暮らし方
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