「あいだ」がしなやかさと強さを生む
ただ、計画すること自体が無意味だというつもりはありません。もちろん、人生を生きる上で計画と目標は必要です。でも、第7回でご紹介した、計画の中に偶然性を取り入れる「プランド・ハプンスタンス・セオリー」のように生きようとしなければ、予定が変更されたときに折れてしまうことがあるのです。
また、クランボルツが言うように、個人のキャリアの8割は偶然性に左右されているのですから、自分の立脚点や接している面積を広げることが偶然性に対応できる策でもあります。そのためには、自分の世界を限定せずに「あいだ」を行き来するようにしておきたいものです。
仕事だって、社畜を自認する人が本人の希望とは裏腹に、ある日クビを宣告されて突然フリーランスにならざるを得ない可能性は十分あるし、クリエイターやエンジニアが天職だと思っていた人が、実は営業やマネジメントで新しい才能を発揮する可能性もあります。
仕事にはやりたい仕事と、やりたくない仕事があるのも厳然たる事実です。やりたくないことはやらなくてもいいなどと言うつもりはありません。仕事はその「あいだ」の往復によって、自分の可能性が高まることは間違いありません。
自分の可能性を一つに限定せず、二者択一にして他を切り捨てることをせずに、複数の可能性を残したまま、「あいだ」を積極的に行き来する人生を送ること。会社員とフリーランスの「あいだ」、お金と充実の「あいだ」、ネットとリアルの「あいだ」を自由に往復するのです。
シェアという考え方だって、今後すべてがシェア社会になるという単純な話ではありません。多くの人にとっては、消費と所有の「あいだ」にシェアがあるはずです。あるいは、自らDIYで創り出すような選択肢だってあります。
「あいだ」を行き来する、行き来できる複数の選択肢、拠点を持つということは、折れにくい生活をつくり出すことができます。また、偶然にも柔軟に対応することができ、新たなチャンスを生み出せます。固い板は大きな衝撃で二つに折れてしまいますが、しなやかで強いカーボンのような素材は衝撃を吸収し、その反動を使って衝撃を遠くに打ち返すことができるのです。時に形を変えることもできる変幻自在な素材です。これからのライフデザインも、そのようなしなやかさを持つことです。