価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になってくるのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。

アイデアがこじんまりして飛ばないときの救済法、フレームアウト思考法Photo: Adobe Stock

あらゆる制約を外しながら、
「あり得ない(ぶっ飛んだ)」アイデアを出す

 長く関わっている仕事や戦略を自分で考えて、アウトプットも自分で考えるという状況のときによくあるのが「アイデアがこじんまりして飛ばない」という問題です。

 そんなときに使えるのが、この「フレームアウト思考法」です。

 フレームアウトというのは、撮影のときなどに、対象がカメラの画角から外れてしまうことを指します。この言葉の通り、アイデア発想をするときに、通常で考える範囲から「あえて」フレームアウトして考えてみようというものです。

 通常、アイデアを考えるときには、様々な制約を加味しながら考えるものです。

 しかし、ここではあえて、予算の制約を外す、技術的な制約を外す、ターゲットの制約を外すなど、あらゆる制約を外しながら、「あり得ない(ぶっ飛んだ)」アイデアを次々と出していきます

 たとえば、以前にも例に挙げた企業の周年イベントの企画を考えてみましょう。フレームアウト思考法からあり得ないアイデアを考えてみると、

会社の創立記念日を、国民の祝日にする

 など、あり得なくて、馬鹿げたアイデアになります。

 フレームアウト思考法としては、まずは、このようなぶっ飛んだアイデアを出していきます。

 そしてその後、それらの「あり得ないアイデア」を、現実的な制約を加味しながら、現実的なアイデアに落とし込んでいくのです。

「国民の祝日は無理だとしても、創立記念日を会社の公休日にする」
「公休日は難しいとしても、午前の式典に社員全員が出席して、午後も仕事はせずに、チーム間で競うレクリエーションを行う」
 などなどです。

 このように、ぶっ飛んだあり得ないアイデアを起点として、通常では考えつかないアイデアに調整していくのです。

チームでアイデアを出すときにも使える

 この方法は、チームでアイデアを出す、というときにも役立ちます。

 チーム編成をするときに、私はよく、アイデアを実際に形にするまでの力はないけれど、私が発想しないようなアイデアを思いつくことができる飛躍力があるような若手を入れることがあります。

 その理由は、彼らの出す「あり得ない」と思えるようなアイデアが、ブレークスルーのヒントになることが多いからです。

 しかし、そんな人がいつもいるわけではありませんし、彼らだけでは足りないときもあります。

 そういうときには、チーム全員でいったん「フレームアウト」して、あり得ないアイデアを出し合ってみてはいかがでしょうか。

(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)

仁藤 安久(にとう・やすひさ)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012~13年電通サマーインターン講師、2014~16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。