池上彰氏池上彰氏 Photo:JIJI

トランプ現象は、ひとりの政治家の人気だけでは説明できない。背景には、没落した労働者層の絶望、聖書を文字通り信じる福音派の存在、そしてワクチン接種すら政治問題になるアメリカ独特の自由観がある。池上彰氏がすすめる3冊から、日本からは見えにくいアメリカ社会の分断を読み解く。※本稿は、ジャーナリストの池上 彰『知の本棚』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

トランプ現象は分断の「原因」ではなく「結果」
『それでもなぜ、トランプは支持されるのか』

 この書名を見て、「本当だ、どうしてなのか」と思った人も多いことでしょう。数々の女性スキャンダルが表面化しても支持率が下がることなく、大統領に当選。2020年の選挙では一度敗れたものの、「選挙が盗まれた」と言い張り、再び共和党の大統領候補に選出されました。その後、ニューヨーク州の地裁で有罪評決を受け、いよいよダメかと思いきや、かえって支持率が上昇し、多額の政治献金を集めました。

 アメリカ政治に詳しい著者は、トランプがアメリカの分断を作り出した「原因」ではない、「結果」なのだと喝破します。

 かつてアメリカの民主党といえば、労働者の味方、弱い者の立場に立ち、共和党が金持ちのための党でした。しかし、産業構造の変化によって、民主党を支持していた労働者たちは没落。いつしか民主党はITや金融業に代表される高学歴で高所得者の党になっていました。

 それに対し、没落した低学歴の労働者たちは、エスタブリッシュメントたちへの反感を強め、弱い者の気持ちを理解するトランプを支持するようになったのです。