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インキュベーションの虚と実

世界から熱い視線を注がれる500 Startups
起業家を成功に導く文化と手法とは何か【前編】

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第24回】 2013年4月8日
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多くを成し遂げ、さらに進化と発展を
それを可能にするのは強いカルチャー

番頭、クリスティン・ツアイ氏

 次に取り上げるのは、500の番頭であり、進化を後押しするエンジンの役割を担うクリスティン・ツアイ氏だ。

 クリスティン・ツアイ(Christine Tsai)氏は、投資全般、アクセラレーター・プログラム、メンター・ネットワーク、GoogleやFacebookなど外部企業とのリレーションを担っている。ちなみに、500の立ち上げ期に妊娠・出産したパワフル・ママだ。

 「将来の期待や具体的な目標を掲げて始めたわけではない。やりながら軌道を修正し進んできた二年間だった。結果として成し遂げてきたことは、当初の想像以上だと思う」とツアイ氏は言う。

 実際、コミュニティ、ネットワーク、イベント、ワークスペース、アクセラレーター・プログラムなど、実に様々なことを成功させている。一号ファンドの成績は順調で、すでに価値は数割増しだ。Wild FireやTwillio、SendGrid、TaskRabbit、MarketBot、9GAG、Vikiなど注目される投資先企業も増えている。

 もっとも、「他と違う戦略を意識してやってきた。例えば、海外のスタートアップや女性起業家への投資などは、やる意思がないと難しいものだ」とツアイ氏は言う。実際、女性投資家に積極参加を呼びかけている。

 ツアイ氏は手がけるプロジェクトを進化させることにも余念がない。アクセラレーター・プログラムへの参加企業の募集は、メンターからの推薦が主だったが、試しにAngel Listを使ったところ、実によい結果だったので、全面的にAngel List経由に変更することに決めた。Angel Listとは、スタートアップの資金調達、エンジェル投資の活性化をねらった、投資家とスタートアップが集まる米国のコミュニティ・サイトである。

 募集方法を変えたのは、500が海外含め広く知られるようになり、応募のプロセスを改善する必要を感じたからだ。「以前から我々はAngel Listはよいと思っていて、経営チームとも懇意だった。Angel Listがちょうどインキュベーター用の応募プロセスをつくると聞いたので、自社でつくるより、それを使おうと考えた」(ツアイ氏)

 また、Angel Listには、サイト利用者がどういう人とつながりがあるかといったデータが蓄積されており、それも役に立つと思ったという。

 「これからは、よりよいオペレーションをつくっていきたい。多数のスタートアップに投資しているが、我々のプロセスはまだまだ追いついていない。無謀でなく、思慮深いものにしていきたい」と、ツアイ氏はさらなる改善への熱意を語ってくれた。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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