ボンベイ証券取引所。インドを代表する証券取引所の入り口がこれだ Photo by Shuji Honjo

前回第22回につづき、北米の起業家や投資家など二十数名とともにバンガロール、ムンバイ、デリーとインドの主要三都市を10日で回ってきた、500 Startups主宰の「Geeks on a Plane」(ギークス飛行機に乗る)での所見についてお送りする。

 市場が異なると前提も異なり、なんだこれは、というアイデアが生まれ、結果をもたらすことがある。日本とインドは実に異なり、面白いインドのスタートアップたちは、まさにこうした革新性を体現している。そして、大きな社会的なインパクトをもたらしつつある。

ワン切りさせて顧客とつながる
大ブランドが惚れ込む新モバイル・マーケティング

 インドでは、広告や看板は目立つが、近代的なマーケティングは遅れている。インターネットや情報通信の活用も、まだ先進国のような状況にはない。

ZipDialのトップページ。名だたる大企業が利用している 拡大画像表示

 インドの携帯電話の普及は急速であり、インターネット・ユーザー数の1億5000万を大きく超える6億人(9億台)にのぼる。しかし、そのほとんどがプリペイドのフィーチャーフォン。通話やテキスト・メッセージ送信には課金されるが、テキスト・メッセージの受信は無料。電話をかけてすぐ切ればかかった番号は着信側に分かるが、課金は発生しない。日本ではワン切りと言うと悪徳目的の方が連想されるが、これをまっとうなビジネスとして成立させているのがZipDialだ。

 ZipDialが提供した電話番号を大企業が広告や自社ウェブサイトなどに掲載。それをみた消費者が、電話をしてすぐに切る。すると、その人に、企業からマーケティング・メッセージやクーポンなどがSMSで届くという仕組みだ。企業は、そのブランドに関心がある消費者の携帯電話番号を獲得できるわけだが、その有効性は高い。なお電話会社も、メッセージ送信の売上が増えるとZipDialを歓迎している。

 ZipDialがテストでクリケットのスコアを知らせるサービスの開始を、フェイスブックに2回掲載しただけで、利用がどんどん伸びて一日で数百万もの電話がかかったという。インド国民のクリケット好きは有名だが、それ以上にZipDialのインド消費者への親和性と口コミに乗る威力を示すエピソードだ。