【小説の神様】実は超絶“こじらせ男子”だった…意外な素顔に親近感しかない

2025年10月11日 8:10

【解説】キャリアを切り拓くうえで重要な示唆

この志賀直哉の「こじらせ」とも言える自己との対峙は、現代のビジネスパーソンにとっても、キャリアを切り拓くうえで重要な示唆を与えてくれます。

私たちは日々の業務において、常に論理的でポジティブな側面を見せることが求められがちです。しかし、内心では「このままで良いのか」という不安や、「あの人には負けたくない」という嫉妬など、矛盾した感情を抱えているのではないでしょうか。

直哉がその葛藤を作品に昇華させたように、私たちも自らの弱さや矛盾から目を背けるのではなく、深く見つめること。それこそが、自己を客観的に分析し、次なる成長への課題を発見するための第一歩となります。

一見ネガティブに思える感情も、突き詰めれば「もっと成長したい」という欲求の裏返し。そのエネルギーを認識し、行動へと転換することができれば、それは強力な成長のエンジンになり得るのです。

さらに、志賀文学が描き出す人間の複雑な心理は、対人関係の極意を教えてくれます。ビジネスの現場は、利害や感情が複雑に絡み合う人間関係の連続です。

顧客の無理な要求の裏にある承認欲求、部下の反抗的な態度の裏にある不安。こうした言葉にならない本音を読み解く洞察力は、交渉やマネジメントにおいて極めて有効なスキルとなります。

直哉が自己の矛盾を通して人間の普遍的な姿を捉えたように、私たちも他者の複雑な内面を理解しようと努めること。その姿勢が、強固な信頼関係を築き、チームのパフォーマンスを最大化させ、ひいては大きな成果へとつながっていきます。

「小説の神様」が遺した人間への深いまなざしは、AI（人工知能）には代替できない、人間ならではの価値を発揮するためのヒントに満ちているのです。

※本稿は、『ビジネスエリートのための教養としての文豪』（ダイヤモンド社）より一部を抜粋・編集したものです。