怒りを鎮め、仲間を守る…“援護射撃リーダー”が教える現代のマネジメント術
101歳、現役の化粧品販売員として活躍している堀野智子(トモコ)さん。累計売上高は約1億3000万円で、「最高齢のビューティーアドバイザー」としてギネス世界記録に認定されたキャリア61年のトモコさんが、年をとるほど働くのが楽しくなる50の知恵を初公開した話題の書『101歳、現役の化粧品販売員 トモコさんの一生楽しく働く教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものをお送りする。佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)が「堀野氏の技法は、ヒュミント(人間による情報収集活動)にも応用できる」と絶賛(日刊ゲンダイ・週末オススメ本ミシュラン)する世界一の先輩による“人生訓”は、アナタの疲れた心も元気にしてくれる!
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逓信省、電話局への第一歩
求められた「モールス信号」の技術
私の最初の就職先は、現在のNTT(日本電信電話)で、当時の「逓信省」でした。逓信省は、郵便や電信電話を管轄していたのですが、私はそのうち電信電話(電話局)に就職。電話交換手をしていたんです。
当時、電話交換手には、点(トン)と線(ツー)を組み合わせた「モールス信号」をマスターすることが奨励されていました。
挑戦心がつかんだ「特別手当」
誇らしい「着物の冷やかし」
試験があって、合格すると、月々のお給料の他に「手当」がついたんです。新しいことに挑戦するのに目のない私なので、一生懸命勉強して試験に合格し、晴れて手当がもらえるようになりました。
友達からは「あんた、たくさんお給料もらえるから、毎月新しい着物をつくれるんでないの?」なんて冷やかされましたが、うれしかったです。
2年目のステップアップ、「監督」へ
仲間を守る「援護射撃」
モールス信号をマスターしたこともあってか、就職して2年が過ぎたころには「監督」と呼ばれる立場になりました。今でいう「グループリーダー」ですね。
ずらっと並んで座った電話交換をする「交換手」の背後に立って、何か手間取ったり、対応に困ったりしている人をサポートする役割です。まさに“援護射撃”そのものです。
つながらない時代の苦労
矢面に立つリーダーの「お詫び」
今より通信事情がよくないですから、なかなかスムーズにつながらず、お客さんが怒り出すこともしばしばありました。
そんなときに交換手に代わって、怒りを収めてもらうために「申し訳ございませんでした」などと愛想よくお詫びするんです。言葉はあまりよろしくないですが、「上手になだめて、怒りを鎮めていただく」というのがグループリーダーの重要な役割の1つだったんですね。
【解説】時代を超えるリーダーシップと「学ぶ姿勢」
この貴重な体験談は、通信技術の黎明期という時代背景を超えて、現代のビジネスパーソンにも通じる多くの学びを含んでいます。
挑戦が評価につながる「アップスキリング」の実践
まず注目すべきは、与えられた交換手の業務だけでなく、「モールス信号」という当時の新スキルに自ら挑戦し、習得した点です。「手当」という明確なインセンティブ(報酬)を得ただけでなく、その専門性が評価され、2年目という早さで「監督」(リーダー)へ抜擢されています。
これは、現代における「アップスキリング」や「リスキリング」の重要性を示しています。本業に加え、新しい技術や知識を貪欲に学ぶ姿勢が、自身の市場価値を高め、キャリアを切り拓く原動力になることを示す好例です。
現代にも通じるリーダーの「二つの顔」
また、「監督」の役割は、現代のマネジメント論にも通じます。一つは、部下が困難に直面した際にサポートする「援護射撃」。これはチームのパフォーマンスを最大化する「サポーター」としての顔です。
もう一つは、お客様の怒りに対しては自ら「矢面」に立ち、組織の代表として「お詫び」し事態を収拾する「防波堤」としての顔です。
チームを守り育てる内部への視点と、顧客や外部の圧力に向き合い責任を負う外部への視点。その両方を高いプロ意識で実行することの重要性が伝わってきます。
※本稿は、『101歳、現役の化粧品販売員 トモコさんの一生楽しく働く教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。









