仮採用された私へのTさんの指導は、驚くほど「QFB─3SC」の各フェーズに沿ったものでした。照らし合わせながら見ていきます。
成長を後押しされた経験に基づく
誰もが再現可能な教育メソッド
◆Q(Question&Agreement)――質問と合意形成
Tさんは、私に「性格を変える」という挑戦的な目標を提示し、それに取り組むかどうかの「合意」を求めました。ここから、私たちの「共成長」に向けた対話が始まったのです。
◆F(Fact Finding)――事実確認
Tさんのレッスンにアシスタントとして入った際には、「生徒さんにアドバイスのときの声が届いていないな。生徒さん、首傾げてるだろ?」と指摘されました。
感情的な叱責口調ではなく、淡々と「声が小さい」という事実(Fact)を伝えてくれました。
◆B(Because&Background)――理由、原因、背景の深掘り
Tさんは「声を出すときに何考えてる?」「的確なアドバイスをしないといけないと思いすぎると、迷って声が出なくなることはないか?」と質問を投げかけてくれました。
◆Summary&Suggest――まとめと示唆、提案
レッスン後、Tさんから
「お前のいいところは丁寧さや。一人ひとりの名前を覚え、生徒さんの上達を真剣に考えてる。それがお前の持ち味や」
「まずは声が届くところまで生徒さんに近づいてアドバイスしたらいい」
「ウォーミングアップのときは、丁寧さよりも全体の雰囲気を盛り上げるのが優先や。隣から聞こえてくる俺のアドバイスをそのまま今の5倍の声量で復唱してみろ」
「他に改善点がないか今思い出してみて、1つでいいから言ってみろ」
と、私の行動(Fact)と内面(Background)を整理(Summary)し、「丁寧さという強みを活かせ」「5倍の音量で」という成長への道筋を示唆(Suggest)するフィードバックをくれました。
◆Support&Commit――サポートとコミットメント
Tさんは、うまくできたときもできないときでも、
「今日も必死さが伝わってきた。できることが増えてきた!あとは声量アップと笑顔や。10倍くらいの声量を出すつもりでちょうどいいかもな。よく頑張った!お疲れさん!」
と日々の小さな変化を見逃さず、常に気にかけているという姿勢(Support)を示してくれました。
『「言いにくいこと」をうまく伝える』(司 拓也、フォレスト出版)
この対話を通じて、私は自分に自信を持ち、瞬く間にチーフコーチに昇格し、自主開催の特別レッスンはキャンセル待ちが出るまでになりました。卒業まで3000人以上の方にレッスンし、対人不安は消えていました。
Tさんのアプローチは、単に「頑張れ」と突き放すのではなく、事実に基づき、背景を理解し、強みを活かす道を示し、寄り添い続けるものでした。
この原体験が、誰もが再現可能な形で部下の成長を後押しできるメソッドの原型となりました。







