本人が「できない理由」を、外から言い当てられるよりも、自分で気づくことのほうが、学習として定着します。

ただ叱るのではなく
一緒に課題を解決する

 さらに、「次に同じことが起きたとき、どうすればいいか」を一緒に考えておくと、再発防止にもつながります。「次からは、10分前にアラームをセットして」「会議資料は前日に印刷しておこう」――そんな小さな成功体験を積み重ねることが、悪循環を断ち切る最初の一歩になるのです。

 このような悪循環は、時間にルーズな人だけの話ではありません。「怒られるのが怖い」「ミスをしたくない」「他人に迷惑をかけたくない」という気持ちは、誰の中にもあります。ただ、それを避けようとするあまり、かえって状況を悪化させてしまうという悪循環なのです。

 私たちは皆、子どもの頃に身につけた生き延びるためのルール(スキーマ)を、無意識のうちに大人の職場にも持ち込んでいます。それを責めるのではなく、理解することからしか変化は始まらないのです。

 職場にはいろいろな人がいます。仕事のペースが遅い人、集中が途切れやすい人、やる気のない人、急な予定変更に強い不安を感じる人――。そうした同僚に対して、私たちはつい「努力が足りない」「もう少し社会人として自覚を持ってほしい」と思ってしまうことがあります。

 けれども、そうした「普通の働き方」が、もともとある特定の人の感覚や条件を前提に作られているとしたらどうでしょう。少し視点を変えれば、「できない人」ではなく、「環境が合っていない人」「やり方を知らない人」と見えてくるかもしれません。

姿勢を変えるべきなのは
問題社員よりも会社側

 2013年に施行された障害者差別解消法は、「環境側を変える」という発想を法の形にしたものです。この法律では、行政や企業などの事業者に対し、障害のある人に対して不当な差別的取り扱いをしてはならないこと、そして本人の申し出があった場合には、過度な負担にならない範囲で「合理的配慮」を行うことが求められています。