写真はイメージです Photo:PIXTA老後に備えてお金を貯めることや、借金をしないことを良しとする風潮がある。しかし、やりたいことを我慢した結果、「使えばよかった」「やればよかった」と後悔する人も少なくない。85歳の東大名誉教授が自身の経験をもとに、「使わなかった失敗」と「お金の使い方」の判断の重要性を語る。※本稿は、東京大学名誉教授の畑村洋太郎『人生の失敗学 日々の難儀な出来事と上手につき合う』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
人生を豊かにする
お金の使い方とは
お金の失敗の話をします。お金は人類が発明した、すべてを測ることができる唯一万能の共通尺度です。物やサービスだけでなく、時間であったり、慰謝料のように精神的なことも、いまはお金に置き換えることができます。
質的にちがうものを定量化する機能は、おそらくお金以外にありません。これがお金のすごさですが、同時に気色の悪さを感じます。
お金が怖いのは、個人差はあるものの人の考えや行動を支配しがちな点です。なにをするにもお金が必要で、そういう経験を繰り返しているうちに、お金さえあればなんでもできると錯覚させられます。実際、生きることとお金が等価であるように感じて、執着している人もいます。
お金に振り回されてはいけない、といった説教じみたことを、ここで言う気はまったくありません。私の考えは単純です。お金とはそういうものだと理解した上で、うまくつき合えばいいのです。
お金の失敗というと、多くの人は借金をすぐに思い浮かべるでしょう。そのことは後に触れますが、私のまわりではそれとは少しちがった話を聞くことがあります。



