太一さんと浩平さんは「養子縁組」をしていなかったため、遺族年金はもらえないというのです。

養子縁組をしていない連れ子は
「子」としてカウントされない

 遺族厚生年金には、受給できる順番が厳格に決まっています。

第1順位 子のある配偶者(最優先)
第2順位 子
第3順位 子のない配偶者

 厳密に言うと配偶者と子は同順位ですが、両方が受給権を持つ場合は配偶者に優先して支給され、子は支給停止となります。

 ただし、配偶者が遺族基礎年金の受給権を持たない場合(養子縁組していない連れ子しかいない場合など)は、配偶者の遺族厚生年金は支給が停止され、子に支給されるという制度になっています。

 「浩平がいるから、私は『子のある妻』として最優先でもらえるはず」――そう信じていた亜希子さんでしたが、現実は残酷でした。浩平さんと太一さんが養子縁組をしていなかったため、法律上、浩平さんは太一さんの「子」とは見なされません。そのため、亜希子さんの立ち位置は自動的に「第3順位」に格下げされてしまったのです。

 一方で、太一さんが養育費を払い続けていた「前妻の子」は、離れて暮らしていても法的な「実子」です。養育費の支払い実績などから「生計維持関係」が認められれば、「第2順位の子」として、亜希子さんよりも優先順位が上になります。

 結果として、太一さんの遺族厚生年金はすべて、前妻が育てる娘の元へと支給されることが決まりました。

年齢要件と
重い支給停止の壁

 「太一さんと一緒に暮らして、パパと呼んでいたのは浩平なのに、遺族年金が1円も出ないなんて」

 亜希子さんは、通帳の振り込み履歴を見つめて肩を落とします。再婚時に「養子縁組」という書類一枚の手続きさえ済ませていれば、亜希子さんは「子のある配偶者」として受給でき、浩平さんが高校を卒業するまでの生活費を確保できていたはずでした。

 しかし、太一さんが亡くなった後にさかのぼって養子縁組をすることはできません。前妻の子が18歳(高校卒業年度末)になるまでは、亜希子さんに受給権が回ってくることはなく、そのころには浩平さんもまた、公的な支援が必要な18歳を過ぎてしまっているのです。

次のページ

遺言書に「今の妻に遺族年金を全額渡したい」と書いても効力なし

TOP