株式投資ではリターンに目を奪われがちですが、「失っても生活に支障がない余剰資金で行うこと」が大原則です。家族の教育費などを「自分の貯金だから」と都合よく解釈し、「資金が2倍になれば…」というリスクを無視した楽観的な皮算用で相場に挑むのはギャンブルと同じです。常に資金が減る最悪のシナリオを想定し、下落リスクを見極める冷徹な視点を持つことが相場で生き残る鉄則です。

「そりゃ妻も激怒するわ…」リスク無視で皮算用する株式投資初心者の末路Photo: Adobe Stock

「資金が2倍になれば…」
投資初心者が陥る“捕らぬ狸の皮算用”の恐ろしさ

株式投資を始める際、多くの人は「資金がどれくらい増えるか」というリターンばかりに胸を膨らませます。しかし、その楽観的な見通しこそが、相場において最も危険な落とし穴になり得ます。

株式投資を始めたい夫と、それに猛反対する妻の激しいやり取りを描いた以下のシーンは、投資初心者が陥りがちな「リスクの軽視」を如実に表しています。

もう大爆発だ。彼女の目には、怒りと失望が浮かんでいた。
「で? その投資ってやつ、いったいどこからお金を出すつもり?」
「俺の……貯金から」
「貯金なんて、そんなにあったの?」
「いや、たいしてないけど……100万円くらいなら」
「その100万円、子どもたちの教育費とか、家族旅行とか、そういうことには使えないの? 結局、自分のために使うんだね」
――『89歳、現役トレーダー 大富豪シゲルさんの教え』より

「自分のお金」という認識の甘さと余剰資金の定義

妻の厳しい追及に対し、夫は「自分の貯金だから問題ない」と考えています。しかし、家計全体を俯瞰した場合、その100万円は将来の子どもの教育費や家族のいざという時のための「必要資金」である可能性が高いのです。

投資の大原則は「失っても生活に支障が出ない余剰資金で行うこと」ですが、初心者はこの「余剰資金」の定義を自分に都合よく解釈してしまいがちです。家族全体のライフプランを無視して、安易に相場に資金を投じれば、後々取り返しのつかない事態を招くことになります。

リスクを見落とした「2倍になる」という幻想

さらに、夫は妻の怒りを鎮めようと、自分の行動を正当化するために極めて危険な「皮算用」を口にします。

「違うよ。家族のためだって。100万円だけだったら教育費であっという間に消えるかもしれない。でも、それが2倍になったら、教育費も家族旅行のお金もまかなえるかもしれないだろ?」
――『89歳、現役トレーダー 大富豪シゲルさんの教え』より

「2倍になったら」という言葉には、投資において最も重要な「資金が減るリスク」への想定が完全に抜け落ちています。プロの投資家であっても、資金を倍にすることは容易ではありません。それにもかかわらず、「都合よく増えること」だけを前提に大切な資金を相場に晒すのは、投資ではなくただのギャンブルに過ぎません。

「もしこの100万円が半分になったら、家族の生活はどうなるのか?」――常に最悪のシナリオをリアルに想像し、それでも耐えうる金額だけをリスク資産に回すこと。リターンよりも先にダウンサイド(下落リスク)を見極める冷徹な視点は、相場の世界から退場しないための重要ノウハウなのです。

※本稿は、『89歳、現役トレーダー 大富豪シゲルさんの教え』(ダイヤモンド社)をもとに編集したものです。