雲南省の古都・大理(ダーリー)は中国Z世代の「漂流者たち」を引きつける場所となっており、成果を出すこと以外に集中できる貴重な機会を提供している
【大理(中国)】マ・ヨンジャンさん(27)は何カ月もの間、自分の居場所を両親に話さなかった。
大学院生のマさんは昨年、コンピューターサイエンスの修士課程の半ばで授業に行くのをやめた。ソフトウエアエンジニアリングはかつては安泰な職業選択だったが、人工知能(AI)の台頭と中国のテクノロジー企業におけるレイオフの嵐を目の当たりにし、良い仕事に就くことはできないと確信するようになった。勉強する意味をもはや見いだせなくなった。
毎朝、ルームメイトたちが寮を出ていくと、マさんは北京の街をさまよい、公園に座って野良猫を眺めていた。今年に入り、雲南省の大理(ダーリー)へと逃れた。大理は、美しい山々とスローライフで知られ、中国の漂流者たちを引きつける場所となっている。
マさんの両親は彼がまだ大学院に通っていると思っている。彼は両親に心配をかけたくなかったのだ。
「以前は誰もが、生活は良くなり続け、収入も増え続けると考えていた。今は違う」とマさんは語る。「未来に目を向けても希望はあまりない」
中国の好景気時代に生まれた世代が今、機会の減少、競争の激化、そして長年の努力にもかかわらず親の世代より暮らしが良くなっていないという無力感が強まる中で、大人の仲間入りをしようとしている。若者の一部は親と同居する生活に戻っている。安定した職に就くのは難しく、数百万人の若者が不安定なギグエコノミー(単発・短期請負労働)へと追いやられる一方で、過酷な労働文化に押しつぶされる者もいる。
経済の低迷 で雇用市場が縮小する中、過去最多の大学新卒者が社会人としてスタートを切ろうとしている。AIの急速な導入が、その不確実性に拍車をかけている。
テック大手の アリババ や字節跳動(バイトダンス)を含む多くの大手企業は、ひそかに人員削減を進めてきた。企業側は公にはAIを理由にしていないものの、事情に詳しい複数の関係者によると、この技術が要因の一つになっているという。映画製作から金融に至るまで、他の業界でもAIを利用して採用規模を縮小している。
中国政府は AI技術に全力 を注いでおり、経済の競争力を高めるために企業に対してAIの急速な導入を促している。しかし、当局が社会の安定への影響に懸念を示し始めている兆候もある。事情に詳しい複数の関係者によると、当局は雇用主に対し、AIを導入するにあたって 人員削減を行わないよう警告 している。
この警告は、何立峰副首相が昨年、中国の大手雇用主を対象に調査を行ったことを受けて出されたと、事情に詳しい複数の関係者は話す。一部の企業は、AIによって既存の職務の30%以上が失われる可能性があると試算した。ある関係者によると、何副首相はその回答に衝撃を受けた様子だった。








