「丁寧に説明したのに、なぜか相手に伝わらない……」。そんな経験はありませんか? 実は、人の心を動かす言葉には、情報量や説明のうまさだけでは測れない秘密があります。「批評の神様」と呼ばれた小林秀雄は、文章だけで名画の魅力を鮮やかに伝えました。書籍『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』の著者が、小林の驚くべき表現力から、相手の心を動かす伝え方の極意を解説します。
イラスト:塩井浩平
東京生まれ。東京帝国大学文学部仏文科卒。代表作は『様々なる意匠』『無常といふ事』『モオツァルト』など。近代日本文学の発展に大きく貢献した文芸評論家。日本ダイヤモンド株式会社を設立した技術者・小林豊造の長男として生まれる。父がヨーロッパ土産で買ってきたレコードなどの影響で、学生時代から音楽が好きだった。昭和4(1929)年、総合雑誌『改造』の懸賞評論に応募した『様々なる意匠』が入選。これを皮切りに、文学のみならず、絵画や音楽、骨董品などさまざまな対象を評論した。その功績により昭和42(1967)年、文化勲章を受章。昭和58(1983)年に肺炎により81歳で死去。
「説明しているのに伝わらない人」が見落とすこと
「丁寧に説明したのに、相手の反応がいまひとつ……」。そんな経験はありませんか?
商品の魅力を語っても相手はピンとこない。人の心を動かすには、情報の多さとは別の工夫が必要です。そのヒントを教えてくれるのが、「批評の神様」と呼ばれた文芸評論家・小林秀雄です。
なぜ、文章だけで絵の魅力が伝わるのか?
小林は文学だけでなく、絵画や音楽も論じました。モネの「睡蓮」について、『近代絵画』ではこう記しています。
まるで絵の中に入り、画家の心に直接触れたかのような表現です。どうでしょう。なんともロマンティックで詩的な表現ではありませんか。
――『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』より
小林は「色彩が美しい」「構図が優れている」と説明するだけではありません。絵を前に自分が何を感じたかを、読者の想像力が動き出す言葉に変えたのです。
――『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』より
大切なのは、知識を渡すだけでなく、相手の頭の中に光景を浮かべてもらうことです。
「わかった」を「見てみたい」に変える方法
さらに同署では、小林の仕事が後世に与えた影響についても触れています。
――『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』より
モネ人気を一人の功績だけでは説明できません。それでも、言葉が未知の世界への入口になることはあるでしょう。
たとえば商品を紹介するとき、「作業時間を約3割短縮」と数字だけを示すより、「毎日1時間の作業が40分ほどで終わる」と伝えたほうが、便利になった暮らしを想像しやすくなります。
「説明しているのに伝わらない人」が見落とすこと・ベスト1とは、相手に情景を追体験してもらうこと。「何を説明するか」だけでなく、「どんな場面を思い浮かべてほしいか」を考える。それが、相手の心を動かす言葉への第一歩です。





