現在5%の消費税率は、この4月から2段階で10%まで引き上げられる予定だ。それで打ち止めとなるのか。大和総研のリポート『超高齢日本の30年展望』によれば社会保障給付を現在より15%抑制し、消費税率を25%にしたとしても、政府の基礎的財政収支は黒字化しない。しかも、単なる給付抑制、負担増では経済にマイナス影響を与え、問題は解決しない。では、どのようやり方で、どのくらいまで消費税率を上げるべきなのかを論じたい。
なぜ消費税を増税するのか
1990年東京都立大学法学部卒業、大和総研入社。 経済調査部制度調査室、 経済調査部内国経済調査室、構造分析室等を経て、2004年資本市場調査部次長、2009年経済調査部長、2012年から現職。現在、経済財政諮問会議「選択する未来」委員会 成長・発展ワーキング・グループ委員を務める
現在5%である消費税率が、いよいよ4月から8%に引き上げられる。消費税増税は1997年以来だから17年ぶりだ。消費者は日々の負担が増えることを心配する一方、事業者は円滑に価格転嫁できないかもしれないことを心配している。どういうわけか、他の税や社会保険料と比べて、消費税は国民的な関心が特別に強い税になっている。さらに2015年10月に10%まで税率を引き上げることを、政府は年末までに確認することになっている。
そもそも、なぜ消費税の増税が必要かといえば、社会保障制度を維持するためと説明されている。確かに、過去30~40年の政府財政を検証すると、増えたり減ったりする歳出もある中で、社会保障費だけはほぼ一貫して増え続けてきた。現在、社会保障給付費の財源は、おおまかにいって3分の2が保険料、3分の1が税(公費)に求められている。これまで税に求められてきた財源規模をみると、福祉社会が到来したとされる1973年度はGDP(国内総生産)比1.1%(1.3兆円)だったが(1973年は福祉元年と呼ばれた)、2012年度は同6.8%(32.3兆円)となっている。つまり、経済規模対比でみても6倍に増えている。
社会保障のために必要な公費を各時点の税収で賄ってきたなら問題はなかったはずだが、実際には財政赤字(国債の発行など)によって賄ってきた面が強い。お金に色はついていないから財政赤字の原因が社会保障だけにあるわけではないが、高齢化の進行を背景に、最も歳出拡大圧力が強いのは社会保障分野だと言ってよい。もし、財政が破綻するようなことがあれば、社会保障制度も維持できなくなる。