地方都市の駅前で、そして大都市でも地域の商店街で、書店がどんどん店じまいをしている。一方で増えたのがスマートフォン利用者だ。電車でも、喫茶店でも、スマホ族ばかりが目につくようになった。

 そんななか、電子取次大手・メディアドゥが電子図書館ビジネスに乗り出そうとしている。2014年5月、米国公共図書館の9割以上にシステムを提供している最大手OverDrive社との業務提携を発表し、15年4月の正式サービス開始を目標に、全国の図書館を対象にマーケティングやセールスを続けているのだ。

 電子取次としてスマートフォン向け電子書籍配信に強みをもつ同社がなぜいま、図書館に目を向けたのだろうか?

書籍の販売部数を上回る
図書館での個人貸出冊数

見えてきた!電子図書館と出版社のWin-Winな関係<br />米OverDrive社とタッグを組んだ<br />電子取次メディアドゥの挑戦急増するスマホ利用者向けの電子書籍にチャンスを見出す(メディアドゥの溝口取締役)

「約10年前と現在の電車内を撮影した2枚の写真をご覧ください。雑誌や本を読む人がめっきり減り、スマホを見つめる人ばかりになっています」

 メディアドゥの溝口敦・取締役事業統括本部長が、スライドを切り替えつつ壇上から語る。2014年11月初頭、第16回図書館総合展の会場内で開かれた、メディアドゥ主催フォーラムでの一コマである。

「写真が象徴するように、我々の余暇時間の受け皿が、紙媒体からスマホへとシフトしたのです」

「その波にうまく乗ったのがゲーム業界でした。ちょっとした空き時間にスマホでパズドラをやる。そんな人をあちこちで見るようになりました。しかしスマホでは、電子書籍を読むこともできる。スマホの利用で多いのは動画、音楽、ゲームで、電子書籍は11%しかない。限りある余暇時間を人がスマホにあてるなら、もっと電子書籍を選んでもらいたい。そこに電子取次としての強みが活かせる。スマートデバイスへ“本”を溶けこませる――それが我が社のミッションです」