技術でも才能でもない…稲盛和夫がたどり着いた「ど素人が大成功する」たった一つの条件Photo:JIJI

「素人だから」「経験がないから」という理由で何かを最初からあきらめる人は多いだろう。しかし、経営の神様・稲盛和夫氏は、技術も実績もない素人が成功するためにはたった一つの要素が必要だと言っている。素人が成功者になるためのたった一つの条件とは何か。(イトモス研究所所長 小倉健一)

京都に世界的企業を築いた成功者たちも、はじめは素人だった

 稲盛和夫氏は、深く考えさせられる問いを、講演録『成長発展の経営戦略』(ダイヤモンド社)に残している。

 もうかっているきしめん屋と、赤字のきしめん屋。同じ町で、同じように麺を茹で、同じように出汁を取っているのに、なぜ一方は栄え、一方は沈むのか。出汁の秘伝でも、店の立地でも、資本金の多寡でもない。

 たった一つの「ある要素」が、その明暗を分けている――稲盛氏はそう言い切った。

 その一つが何なのかは、いったん脇に置く。先に、稲盛氏がどんな男たちの背中を見て、この結論に辿り着いたのかをたどりたい。

 稲盛氏が経営を語るとき、繰り返し立ち返った原点がある。それは「みんな、はじめは素人だった」という事実だ。

 京セラが最初に手がけたのは、松下電子工業に納めるブラウン管用の絶縁部品だった。テレビ放送が始まったばかりの頃、たった1種類の単純な部品を手づくりする、まったくの単品生産。ワコールの塚本幸一氏は針金細工のようなブラジャーを売り歩き、ロームの佐藤研一郎氏は炭素皮膜抵抗器という電子部品を家で細々とつくり、村田製作所の村田昭氏はポータブルラジオ用のコンデンサをつくっていた。

 京都に世界的企業を築いた男たちは、誰一人として、最初はその道の専門家ではなかったのだ。

 素人で、技術もなく、つくれるのは単純な1品だけ。常識で考えれば、これほど不利な条件はない。事業など起こせるはずがない、と。だが稲盛氏は、世間とは正反対の評価をそこに下す。

《みんな、はじめは素人だった。(中略)素人で技術もないので、つくっているのは単純なものを一つだけ、つまり、単品生産であったわけです。(中略)しかし彼らは、素人なるが故におそれを知りません。つまり、常識にとらわれない。素人なるが故に、既成の概念や慣習、慣例にとらわれない、自由な発想をする人たちでした》

 素人だからこそ、おそれを知らない。素人だからこそ、既成の概念にも、業界の慣習にも、これまでのやり方にも縛られない。だから自由に発想できる。ベテランが「そんなものは無理だ」と即座に切り捨てる場所で、素人は平気で手を突っ込む。知らないという一点が、そのまま最大の武器に転じる。