2015年12月28日の電撃的な慰安婦合意から1ヵ月あまりが過ぎた。これまで合意を履行する具体的な動きは見えてこず、これに反対する慰安婦団体の行動が目に付く。その後この合意はどうなっているのか。着実に履行されるのか。現時点での評価を申し上げたい。
また、北朝鮮の核実験や長距離ミサイル発射の動きを受けて、今後日韓関係はどう変わろうとしているのか展望する。
「挺対協」の主張に初めて
異を唱えた朴大統領
今回の合意の最も重要な点は、朴大統領が先頭に立って、元慰安婦や世論の説得にあたっている点である。
韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)を中心に活動する元慰安婦は、この合意を受けて、「当事者である元慰安婦に相談もせず、慰安婦問題の不法性、法的責任抜きに合意したのは裏切りである」「少女像を関連団体と協議し解決に努力するとした点も屈辱的である」と非難した。
これに対し朴大統領は、外交部は15回元慰安婦と会ったとし、「合意は最善を尽くした結果であり、これを無効と言えば、今後どの政府もこうした難しい問題には手を付けられないだろう」と反論している。
これまで、大統領に限らず、元慰安婦や慰安婦関連団体の主張に真っ向反論した人はなかった。アジア女性基金が韓国で慰安婦問題の解決に結びつかなかったのは、韓国政府が慰安婦の反対に遭い、当初は「元慰安婦の主張もある程度取り入れたものである」としてそれなりに評価していたのが、同基金に対する姿勢を順次後退させて、最後には匙を投げたからである。
挺対協は、もともと女性運動を推進していた梨花女子大学関係者が中心となって設立した団体であり、その指導部は大統領夫人ともつながりのある人がいたため、政治力があった。さらに、最近では1200回以上、雪の日も風の強い日も、毎週水曜日に日本大使館前で抗議活動を行い、韓国国民世論の支持と同情を集めてきた。そのため、傍若無人な行動をとる挺対協に対して誰も異を唱えられない雰囲気になっている。
挺対協が日本大使館前に設置した少女像も、そもそも公道に鍾路区の許可なく建てたもので違法である。私は大使として再三その動きに抗議した。日本大使館前には多くの警察官が公館警備のため詰めているが誰も止めていない。その状況で、私も韓国側に正式な許可を出させなかったのが精一杯であった。