1981年の建築基準法改正前後で
生じる「物件リスク」の大きな差

【液状化予測図】

 この標高図と同様にビジュアルでわかるものとして、『液状化予測図』がある。地盤が古くからの台地だったのか、川などの沖積によってできているのかは、その成り立ちを考えても、リスクが最初から異なることを端的に表していると言えるだろう。

 この他、東京都は『地震の影響想定』も行っている。これには立川断層もあり、現在想定される大地震が網羅されているので心強い。ここまで充実している行政データは珍しいと言える。こうした自然災害の被害予測地図を「ハザードマップ」と呼ぶ。読者諸氏の居住地については、「ハザードマップ+地名」で検索し、確認してみたらいかがだろう。

【通勤手段確保の検証】

 次に、物件の構造や立地について持つべき着眼点は何か。

 まずは、交通の面から見た立地についてだ。東日本大震災のときは鉄道が間引き運転となり、通勤が大混乱した。比較的転居が容易な20代の単身世帯の中には、震災を機に「職住近接」を行った人が多数いることが、人口動態調査からわかっている。熊本地震に見るように、道路が寸断されると孤立する集落も発生する。生活と通勤の交通手段に、常に2つ以上の選択肢があるエリアを選びたい。そのためには、職場から直線距離で離れることをなるべく避けた方がよい。大都市は放射線状に鉄道と道路が整備されているので、郊外部は代替輸送手段が少なくなるからだ。

【いつ建築されたか】

 日本の建物は世界的に耐震性が非常に高い。それは大地震の度に、災害に強い建物の強度が建築基準法などの法律に反映され、高められてきた歴史があるからだ。今回の熊本地震で被害を受けた物件も、建築時期によって倒壊率が異なることがわかっている。阪神大震災のときも同じ傾向が出ている。

 最も大きな差は、1981年に行なわれた建築基準法改正の前後における差である。建物の半壊や全壊の比率は大きく異なり、業界では以前のものを「旧耐震」、改正後の基準で建てられた建物を「新耐震」と呼ぶ。ゆえに、不動産を運用する大手ファンドでは、旧耐震を購入しない方針をとる関係者が大半を占める。震災に見舞われた際に被害が大きいので、そのリスクを負いたくないというのが本音である。

 たとえ新耐震の物件であっても、被害想定を事前に行ってから購入するのがファンドの鉄則でもある。「PML値」という指標は、475年に1回の大地震があった際にどの程度お金をかければ元通りになるかを、パーセンテージで算出したものだ。100億円の物件がPML値8%ならば、大地震が起こっても8億円かければ元に戻せるという試算になる。プロはここまで計算して投資しているので、一般人もこうした目安を参考にすると安心だろう。このへんは連載第1回「首都直下地震で生き残る「最強物件」の条件【上・下】」で詳述しているので、ご参照いただきたい。

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熊本地震をきっかけに「リスクの視覚化」を

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