「皆さん、本当に礼儀正しくて。ちょっと見た目は怖い人もいてはるけど…。ここ(神戸市灘区)で山口組さんのことを悪く言う人はいません。ゴミ捨てのマナーもきちんとしてはります。山口組さんのお陰で、ここは静かな環境が保たれているところがありますね」

 事実、山口組総本部周辺は高級住宅地ということもあってか、近隣を含めていつ何時でも清掃が行き届いている。立小便などはもってのほか。路上での喫煙や、たばこのポイ捨ても見当たらない。ペットの糞の始末もきちんとされている。もちろん、昼夜を問わず騒音を出したり、大音響を発する者もいないという。

 元暴走族メンバーだったという40代男性は、約30年前の当時、山口組総本部周辺での「暴走行為は控えていた」と話す。

「正直、暴走族時代も今も、法の範疇で活動している警察は全然怖くはない。でも法の枠組みを超えた力と発想で生きている山口組さんに迷惑を掛ける度胸は、自分にはなかった」

ワルは警察より山口組が怖い!?
ヤクザが市民に慕われる街

 もちろん山口組から何かされたり、言われたりしたわけではない。それでも警察よりも山口組に、市民たちは怖れをなし、敬意を払っているように見える時がある。少なくとも、全国最大規模といわれる暴力団組織の存在が、町の秩序を保つのに役立っているわけだ。前出・元暴走族メンバー男性が続けて語る。

「神戸では、ヤクザの権威がまだまだあるから、それが犯罪の抑止力になっている気がします。悪さをしたら警察や裁判だけでは済まない“力”がある…そういう意識が関西人にはありますから」

 実のところ、一部かもしれないが、市民のこうした意識に警察当局は困り顔を隠さない。兵庫県警関係者の一人が明かす。

「今回のハロウィン実施で、山口組を応援する市民が増えるようなことは断じてあってはならない。今回、(山口組総本部の)近隣とはいえ、ハロウィンでの菓子配りを許してしまったことは慙愧に耐えない」

 確かに山口組総本部前に「詰所」まで設置、菓子が配られた神社の隣に交番も設置している兵庫県警察としては、その面目を潰された格好だ。これに、港町、商都という土地柄もあり、損得勘定に敏く反権力的な商人気質溢れる「神戸っ子」たちはやんやの喝采を送る。

 元々、神戸市民にとって山口組をはじめとする暴力団という存在は、さほど怖い存在ではない。むしろ親しみある存在だ。その扱いは、三菱重工業神戸造船所、川崎重工業神戸工場、神戸製鋼所といった「神戸にある著名全国企業」と同格といっていい。

 神戸生まれ、神戸育ちだという70代女性は、神戸市に住む高校生が高校枠で就職を希望する場合、戯言が過ぎる教員のなかにはこう進路指導する者もいたという。