みずほ銀行の暴力団融資問題が記憶に新しいが、この手のトラブルは銀行だけの問題ではない。規模を問わず、あらゆる業種の企業が暴力団関係のトラブルのリスクを抱えていると言ってもいい。その企業の社員、またその家族も、いつ、どのようなときにトラブルに巻き込まれるかわからない。いざトラブルが起きた場合、あなたはうまく切り抜けられるだろうか。今回は、暴力団関係のトラブルを数多く解決してきた石上晴康弁護士に、実際の事例を基に急場をしのぐためのコツや、その場で言ってはいけない言葉などを伺った。(文/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男、協力・石上晴康弁護士、弁護士ドットコム)
何気なく停めた営業車
その前にあった店とは
ほんの3分で済むはずだった。
大手不動産情報会社の営業担当者・田中(仮名、20代男性)は、毎日担当エリアの地元不動産会社を回り、最新の物件情報を集めていた。そのエリアとは新宿歌舞伎町。飲食店やオフィス、住居などさまざまなニーズがあり、若手不動産営業マンにとって経験を積むにはもってこいの場所だった。
田中はいつものように営業車に乗って、得意先の不動産屋に図面を届けに行った。しかし、昼間とはいえそこは日本有数の歓楽街のこと、車を停めるパーキングがなかなか見つからない。仕方なく、目的地の不動産屋の向かいに車を停めた。
「図面を届けるだけだし、いいか」
そう思って、田中は車のカギを付けたまま、図面だけを手に不動産屋へ小走りで向かった。しかし、停めた場所がマズかった。そこは風俗店の無料案内所の入り口の前だったのだ。派手な蛍光ピンクの装飾も、急いでいた田中の目には入らなかった。
田中が異変に気づいたのは、用事を済ませて車に戻ったときだった。いかにも、それと分かる40代とおぼしき男二人が、車の前で田中の帰りを待っていたのだ。