たとえば、副業を前からやりたいと考えていた人が、会社が「副業解禁」になったらどうなるか。就業規則違反で罰せられる不安はなくなるものの、「自分が副業をやっているのは会社が推奨しているからではないか」と考える。つまり自分の行動の理由づけを、自分(自分の意志)から対象(会社の奨励)に変えてしまうようになり、本来のモチベーションが下がってしまう可能性がある。

「伏業」「副業」「幅業」「複業」
収入とケイパビリティによる4つの分類

「伏業」「副業」「幅業」「複業」 収入とケイパビリティによる4つの分類

 世の中にある副業を分析すると、この図のようになる。

 図の縦軸のケイパビリティとは副業を通じて高められる能力を指し、個人のスキルと他者とのネットワークがベースになる。

 まず左下の「伏業」とは、会社に隠れて(伏せて)行っている内職やアルバイト、または単発で依頼された知り合いの仕事の応援などである。ネットフリマでの小遣い稼ぎも、最初はここから始まる。収入も少なく、ケイパビリティも高くはならない。

 次に左上の「幅業」とは、社会的問題の解決に目覚めた「プロボノ」、すなわち仕事で培った専門性を社会のために生かす活動・仕事を指す。収入はあまり期待できないが、社会的課題の解決を通じて、人間の幅、スキルの幅を広げることから、「幅業」と名付けた。

 さらに右下の「副業」は、単価は高くないが経済的事情から収入補完のために継続して行われている仕事である。コンビニ、外食、ガソリンスタンドの店員、現場作業、アフィリエイトなどが含まれる。最近は残業禁止の企業が増えて自由に残業できなくなってきたが、残業の割増賃金を考えれば、単純労働の収入は会社で残業をするより時間単価が良くないことが多い。

 そして最後の「複業」は、起業や共同経営などに代表され、会社以外にもう1つの事業を立ち上げていくことなどを指す。『ライフシフト』の著者グラットンらは、こうした複業を「人生100年時代を迎え、企業での仕事と同時に持つこと」を薦めている。

 ただし複業を行うためには、自らのスキル向上、市場機会を探索するリサーチ、綿密な事業計画の立案などが必要であり、それは事業を開始するかなり前から準備しておかなくてはならない。冒頭で紹介した企業の副業解禁のほとんどは、この複業を通じて社員の能力向上、企業の活性化を狙っているものである。