副業解禁はメリットだけではない、企業と社員が陥りがちな落とし穴とは
「副業解禁」が多くの企業で語られるようになってきたが、それほど簡単にいくものなのか。現状を分析する(写真はイメージです)

「副業解禁」を宣言する企業が増えてきた。この動きは、企業とそこで働くビジネスパーソンをどう変えるだろうか。「副業」についてはこれまで漠然とメリットばかりが語られてきたが、実際はそれほど簡単な話ではない。新著『マルチプル・ワーカー 「複業」の時:働き方の新たな選択肢』(三笠書房)を上梓した早稲田大学ビジネススクールの山田英夫教授が、会社と社員が陥りがちな落とし穴、そして「副業解禁」の本来の意義を解説する。

7割の人が興味を持っていても
「解禁されたら副業しよう」は失敗の元

「副業解禁」を宣言する企業が増えてきた。大手ではロート製薬、ソフトバンク、コニカミノルタ、カゴメ、HIS、新生銀行、ユニチャーム、リクルート、ヤフーなど、新興企業では、サイボウズ、エンファクトリー、グロービス、カブドットコム、DeNA、サイバーエージェント、メルカリ、クラウドワークスなどだ。毎週のように「解禁」のニュースが出ている観がある。

 こうした動きは、企業とそこで働くビジネスパーソンをどう変えるのだろうか。その双方の視点から、これまで漠然とメリットばかりが語られてきた観のある「副業」について考察したい。

 まずは、ビジネスパーソンにとっての副業だ。世の中に「副業したい」という社員は7割を越えるという調査もあり、「もしかしたら自分の会社でも解禁されるのでは?」と期待するビジネスパーソンもいるだろう。しかし筆者が副業解禁した会社を調査したところ、社員が「解禁されたから副業しよう」と始めた副業は、必ずしも成功していないことがわかった。それは何故だろうか。

 第1の理由は、「解禁されたので副業しよう」と考えて仕事を探すと、副業すること自体が目的になってしまい、やりたいこと(will)よりも、できそうなこと(can)に手を出してしまいがちである。「will」の乏しい副業は、何らかの困難が生じると長続きしない。ロート製薬やエンファクトリーでも、短期間で挫折してしまった事例がある。

 第2の理由は、会社に内緒でアルバイト的に行なう副業であれば手を出しやすいが、複数の仕事を同時に持つ「パラレルキャリア」「マルチプルキャリア」(複業)を行うためには、前もって相当の準備が必要だからである。これについては後述する。

 第3の理由は、本来やりたいことにプラスのインセンティブを与えられると、人間はますますモチベーションが強くなるかと思いきや、実際には必ずしもそうとは言えないからだ。

 心理学に帰属理論というものがある。これによれば、もともと高い動機づけを持っている人に十分すぎる報酬を与えると、本来持っていたモチベーションが下がってしまうという。