HondaJet Echelon(飛行イメージ)HondaJet Echelon(飛行イメージ) 写真:ホンダ

ホンダ創業者・本田宗一郎の夢だったホンダジェットは目下、次世代機を開発中だ。これにより業績の低空飛行から浮上できるのか。日本らしい技術が結集したスペックを振り返ると共に、次世代機の全貌と今後のビジネスチャンスを予測しよう。(桜美林大学航空マネジメント学群教授 戸崎 肇)

ホンダジェットが株主優待に
次世代機で「世界初」の技術革新とは?

 ホンダが、新NISAブームを背景に、小型ジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」に乗ることができる株主優待を導入したという記事を見て驚いた。

『NISAでホンダジェット乗りませんか? 株主優待でファン増やす』(6月17日、日本経済新聞)によると、100株を3年以上保有する株主なら誰でもチャンスがあり、6800人以上が応募し、855倍もの抽選倍率で大人気だったという(2024年)。

 見事当選した株主は、大分空港の発着で瀬戸内海を1周する約30分の遊覧飛行を楽しんだそうだ。ホンダジェットは1機で約11億円(26年納期分)。250機以上を世界で納入したというが、富裕層のプライベートジェットや企業のビジネスユースがほとんどだろう。遊覧飛行のように個人が気軽に乗れる機会はあまりない。

 ホンダは、株主に実際に商品を体験してもらうことで自社の強みをアピールし、ファンを増やしたい狙いがあるそうだ。実に良い試みだと思う。

 というのも、ホンダジェットは日本が世界に誇る小型ジェット機であり、17年に北米市場で販売されると、瞬く間に5人乗りクラスの販売機数でトップの座を獲得。21年までは5年連続で世界1位をキープしていた。

 そして目下、26年に初飛行、28年に型式証明取得を目指す次世代機の開発に取り組んでいる。こちらは、これまでのホンダジェットよりも1クラス大型。何より注目は、世界初の技術革新チャレンジをしようとしていることだ(詳細は後述)。

 一方で、創業者・本田宗一郎の夢でもあったこの航空事業は、まだ黒字化できていない。特に近年は開発コストがかさんで、担当する米国子会社の赤字が積み重なっている状況だ。

 ホンダジェットは次世代機で挽回し、業績の低空飛行から浮上できるのか。人気の秘密を振り返ると共に、次世代機の全貌と今後のビジネスチャンスを予測しよう。