「一見それほどでもない症状でも、実は放っておくとこわい症状も少なくないのです。最初は気にもとめないわずかな症状が、放っておくと、取り返しがつかない大病になることもあります」。そう話すのは、テレビでも人気の総合内科専門医・秋津壽男氏だ。体からのSOSサインに気づかず、後悔することになってしまった方をこれまでたくさん見てきたという。秋津医師の新刊『放っておくとこわい症状大全~早期発見しないと後悔する病気のサインだけ集めました』は、まさにこうした病気で後悔する人を少しでも減らしたいという想いから生まれたものだ。9月16日に発売となった本書の内容を抜粋するかたちで、日々の健康チェックに役立つ情報を紹介していく。

歯ぐきの腫れを放置した先は、病気のオンパレード

 疲れがたまると、歯ぐきが腫れることがあります。健康な歯ぐきはピンク色でシュッとしまっていますが、もし赤く腫れてきたなら体の不調のサイン。免疫力の低下が考えられます。

 風邪やインフルエンザのほか、新型コロナウイルスや肺炎などの感染症にもかかりやすくなるので、早めの改善が必要です。

 また、免疫力の低下を放っておくと、歯槽膿漏になる可能性も高まります。歯周病が起きる原因は、口の中にいる歯周病菌です。赤ちゃんの口の中に歯周病菌はいませんが、親からうつされたり、食べ物を介したりして、ほとんどの人がいずれ歯周病菌保有者になります。

 しかし、歯周病菌があるからといって、全員が歯槽膿漏になるわけではありません。それはちゃんと免疫力があるからです。ふだんは細菌、ウイルスをやっつける免疫細胞が働いていて、歯周病菌の攻撃を防いでくれています。それが免疫力が落ちると、歯周病菌が増えて歯槽膿漏になるのです。

 歯周病菌がやっかいなのは、歯が抜けるだけではありません。歯周病菌が歯ぐきの傷から血管に入り、心臓や脳の血管の壁で炎症を起こして、狭心症や脳梗塞の原因になるともいわれています。ただの歯ぐきの腫れと放っておくと、命にかかわることになりかねないのです。

(本原稿は、秋津壽男著『放っておくとこわい症状大全』からの抜粋です)

秋津壽男(あきつ・としお)

秋津医院院長。1954年和歌山県生まれ。1977年大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をし、和歌山県立医科大学医学部に入学。1986年に同大学を卒業後、循環器内科に入局。心臓カテーテル、ドップラー心エコー等を学ぶ。その後、東京労災病院等を経て、1998年に東京都品川区戸越銀座に秋津医院を開業。下町の一次医療を担う総合内科専門医として絶大な支持を集める。現在、「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系列)にレギュラー出演中。ベストセラーとなった『長生きするのはどっち?』『がんにならないのはどっち?』シリーズ(あさ出版)ほか、著書多数。新刊『放っておくとこわい症状大全』(ダイヤモンド社)が2020年9月16日に発売。