「一見それほどでもない症状でも、実は放っておくとこわい症状も少なくないのです。最初は気にもとめないわずかな症状が、放っておくと、取り返しがつかない大病になることもあります」。そう話すのは、テレビでも人気の総合内科専門医・秋津壽男氏だ。体からのSOSサインに気づかず、後悔することになってしまった方をこれまでたくさん見てきたという。秋津医師の新刊『放っておくとこわい症状大全~早期発見しないと後悔する病気のサインだけ集めました』は、まさにこうした病気で後悔する人を少しでも減らしたいという想いから生まれたものだ。9月16日に発売となる本書の内容を抜粋するかたちで、日々の健康チェックに役立つ情報を紹介していく。

原因不明の腰痛は「心の叫び」の可能性あり

 腰痛といえば、ぎっくり腰や腰椎ヘルニアを疑うのがふつうです。しかし、原因がまったく思い当たらず、慢性的な腰痛がずっと続く場合は「心因性の痛み」が疑われます。

 最近わかり始めたことですが、腰痛の中には、うつ病から来るものが意外に多いのです。中には頭痛や肩こりなど、体の痛みとしてうつがあらわれる人もいます。

 精神的なストレスなどが原因で自律神経や内分泌系が異常をきたし、ズキズキとうずくような痛みが出ることがあるのです。その心因性の痛みで一番あらわれやすいのが腰痛というわけです。「腰痛は心の叫び」といってもいいでしょう。

 最近では、65歳以上の高齢者がうつ病にかかる「老人性うつ」も話題になっています。定年退職や、それにともなう生活リズムの変化、子どもの独立など、環境の変化によるストレスが大きな原因のようです。

 とくに仕事一筋で頑張ってきた人は、一気にやることがなくなり、活力を失ってしまう危険性があります。定年は大きな転機です。定年が近づいたら、残りの人生を楽しむ計画を早いうちから考えておいたほうがいいでしょう。

 また、老人性うつの原因として、脳機能の低下もあるようです。加齢とともに脳の血流が悪くなり、意欲が低下してしまうのです。そのため、血流を整えるための適度な運動も大切です。定年後は一気に運動量が落ちますから、意識して動くようにしてください。

(本原稿は、秋津壽男著『放っておくとこわい症状大全』からの抜粋です)

秋津壽男(あきつ・としお)

秋津医院院長。1954年和歌山県生まれ。1977年大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をし、和歌山県立医科大学医学部に入学。1986年に同大学を卒業後、循環器内科に入局。心臓カテーテル、ドップラー心エコー等を学ぶ。その後、東京労災病院等を経て、1998年に東京都品川区戸越銀座に秋津医院を開業。下町の一次医療を担う総合内科専門医として絶大な支持を集める。現在、「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系列)にレギュラー出演中。ベストセラーとなった『長生きするのはどっち?』『がんにならないのはどっち?』シリーズ(あさ出版)ほか、著書多数。新刊『放っておくとこわい症状大全』(ダイヤモンド社)が2020年9月16日に発売。