無能な管理職は「やり方」に口を出す。いい管理職は何を言わないようにする?
そう語るのは、これまで4000社以上の導入実績がある組織コンサルタントである株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏だ。「会社員人生が変わった」「もう誰も言ってくれないことがここに書いてある」と話題の著書『リーダーの仮面』では、メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理などで悩むリーダーたちに「判断軸」を授けている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、注目のマネジメントスキルを解説する。(構成/種岡 健)
「点と点」の管理術
仕事の流れの中で、肝心なのは、「最初」と「最後」です。
最初に「目標設定」をして、ちゃんと仕事を任せる。
最後に「結果」を報告してもらい、「評価」する。
そのように、点と点で管理することを身につけましょう。
まず、目標設定のときにすべきことは、ルール設定と同じく、明確な言語化です。
「とにかくできるだけ契約を取れるように頑張ってください」
そんなふうにザックリと任せても、部下はどうしていいかわからず迷うだけです。
必ず「期限」と「状態」を提示します。
「1週間後までに『2件』の契約を成約させてください」
「来月までに『150万円の売上』をあげてください」
というように、できる限り数値化します。
ただ、営業などの仕事では売上の数字で成果を表せますが、仕事の種類によっては、数値化できないかもしれません。
それでも、「積極的に取り組みましょう」というような曖昧な表現をなくし、
「来月までに業務改善できる方法を、『5つ』考えておいてください」
など、できるだけ数値化した目標設定に工夫できるはずです。
仕事の要素を分解してみて、回数や時間、前年比率など、数字を見つけて目標につなげるようにしましょう。
「手取り足取り」のワナ
目標の設定をしたら、その期限が来るまで、リーダーから確認してはいけません。
しかし、ダメな管理職は、それができません。
同じ職場にいて仕事ぶりを見ていたら、「やり方」に口出しをしたくなるのです。
次のようなアドバイスをしていないでしょうか。
「もっと早めに先方にはメールを返したほうがいいよ」
「実際に、私が営業の見本を見せるから、1回マネしてみて」
このように、過去の自分のやり方を押し付けるのは、NGです。
リーダーとしては、部下に寄り添っていて面倒見がいいように思えるかもしれませんが、こうしたリーダーが部下の成長を止めます。
やり方を押し付けると、「上司と同じことをやっていればいいんだな」と、勘違いする部下も出てきます。
目標さえ決めれば、途中のプロセスは、部下が創意工夫したり、失敗を繰り返したりして試行錯誤するはずです。
見かねて手を貸してしまうと、部下が失敗から学べるチャンスを奪います。
もちろん、入社1年目の新人や、部署異動してきた人には、最初はやり方を説明すべきです。
この段階で「見て学べ」「先輩たちの背中を見ろ」という指導は、間違いです。
しかし、仕事も覚えてきた部下に対しては、「まずは任せる」ということです。
つい、口出ししたくなったら、仮面をかぶること。それを徹底してください。
(本稿は、『リーダーの仮面』より一部を抜粋・編集したものです)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2024年4月現在、約4000社の導入実績がある。主な著書に『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』のシリーズ(いずれもダイヤモンド社)がある。