ジャパネットたかたの佐世保本社内にあるテレビスタジオを会場に、あの聞き覚えのあるメロディにのせてスタートしたジャパネットたかた創業者(現 A and Live代表取締役)・高田明氏のトークイベント「『ザ・ゴール』から学んだこと」。あたかもテレビショッピングが始まるかのような雰囲気の中、聞き役のゴールドラットジャパン CEO・岸良裕司氏と高田氏のトークテーマは、2021年に日本発刊20周年を迎えた『ザ・ゴール』の魅力と本質、そして高田氏の経営観、人生観の話にまで及んだ。今回の連載では、できるだけ会場の熱気そのままに、ダイジェスト版として当日語られたことのエッセンスをお届けする。
※本記事は2021年11月19日に特別開催された『ザ・ゴール』日本発刊20周年特別トークイベント「『ザ・ゴール』から学んだこと」をもとに作成しています。
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人生とはボトルネックを探す旅

 今回お送りする講演ダイジェスト版のキーワードは、「ボトルネックを探す旅」。「過去は変えられないけれど、未来は変えられる。自分が『今』という瞬間を一生懸命、『つもり』にならずに頑張っていく。そうやってシンプルに考えて、今を生きていけばいいと思うのです」という人生観を持つ高田氏は、部分最適に陥ることなく今を生きるために、どのように仕事、人生と向き合ってきたのだろうか。

「ここからは、部分最適や全体最適についてお話ししたいと思います。今世の中にはさまざまな問題が発生していますが、その原因の多くは人間の驕りにあるのではないかと僕は考えています。しかし、それでも、それを乗り越えていく。そうした気力をもって、楽しく生きていかなければならないとも思うのです。

 さまざまな課題には部分最適が潜んでいるわけですが、僕は人生というのは、その原因となっているボトルネックを探す旅だと捉えています。それは死ぬまで続くもので、僕も今も続けていますし、僕が辞めたあとのジャパネットのメンバーも、日々、ボトルネックとの戦いを繰り広げています。そうすることで、個人の成長も、企業の成長もあると僕は思っていますから」

ジャパネットたかた創業者の高田明氏が自分や会社の成長のためにこだわり続けたひとつの考え方

 では、ボトルネックはどのように探していくとよいのだろうか。

「ボトルネックを探す話をするとき、僕はよくお医さんにたとえて伝えるようにしています。

 みなさんも具合が悪くなると、病院に行きますよね。『じゃあ、注射をしましょう』となって、注射を打ってもらっても治らない。3回、4回と注射を打っても一向に治らない……。一方で、別の病院のお医者さんは『どういう痛み方ですか? どのあたりが痛みますか?』と触診してみたり、『これだったら、こういうところを調べてみましょうか」と色々な検査をして、原因を究明しようとする——。

 僕は本当の名医というのは後者のお医者さんであり、ボトルネックをしっかりと探して痛みの原因を究明し、適切な手当てをすることができる人だと思います。問題解決のためのボトルネックを探し続けて、精度を高めていかなければならないというのは企業でも同じではないでしょうか。

 その時にはトップだけが探すのではなく、仲間と一緒に、みんなでそれを乗り越えていく必要があると思います。そして、先述したように、頑張っている『つもり』になってはいないけないのです。本気で課題に向き合うことが大切です。

 また、企業は自己評価だけでなく、消費者からの評価も見極めていかないといけません。なぜなら、そうしないとボトルネックが見つからないからです。お医者さんだったら患者さんが評価しますし、政治家なら国民や県民が評価する。そこには必ず自分と他者、我々でいうと、企業とお客様という対極が存在し、相手の立場に立って物事を考えていかないと、本当のボトルネックは見つからないと思うのです」

「テレビショッピング」から考える部分最適と全体最適

 ここからは、「部分最適を解消し、全体最適を目指すために、どのような考え方をしていくのがよいのか」について、テレビショッピングを例に考えていく。

「テレビショッピングでいえば、成否を分けるものの筆頭として、MCの話し方が挙がってくると思いますが、それだけではありません。10人、20人いる番組の制作の準備がよくなかったら、MCも上手に話すことができない。伝えたいことが伝わらなくなってしまうのです。

 たとえば、商品紹介の背景をどうするかとか、小さな商品を見えやすいようにどのくらいの大きさで映すのかとか、制作をする人も、部分最適に陥らずに、全体最適になるようにボトルネックを探さなければいけません。

 また、ジャパネットでは利益だけを追求すればよしとするのではなく、お客様に価値を生み出さないものは紹介したくないということもあるため、商品を探してくるバイヤーの精度も求められてきます。

 今でもときどき、テレビショッピングやチラシの作り方について相談される際に感じるのは、ボトルネックの究明が足りていないものは売れないということです。でも、その部分に気づいて改善し、お客様のために全体最適にすることができれば、それだけで売上が変わってきます。0120-441-222にたくさんの電話をいただくことができるのです。

 みんなでボトルネックを探して改善する。それが結果につながる。だから、ボトルネックを探す旅はめちゃくちゃ楽しいのです。世の中では新入社員は3年で3割辞めてしまうとよく言われますが、その楽しさに気づいていないのではないでしょうか。

 僕が社長をした三十数年も、そして今もボトルネックを探す旅を続けています。見つけては改善するの繰り返しです。だから、スタッフたちにもそこをもっと深めていったら、ジャパネットのメッセージが今よりももっと届くよと伝えています」

ジャパネットたかた創業者の高田明氏が自分や会社の成長のためにこだわり続けたひとつの考え方

 続けて、「全体最適」を達成するには、ジャパネット内部のことだけを見ていては難しいという。

「たとえば、お客様がジャパネットでエアコンを購入されたとします。エアコンメーカーさんが頑張って作ってくれた環境にもいいエアコンです。でも、それだけでは全体最適とはなりません。運送業者さんがお客様のところまで丁寧に届けてくれないといけませんし、エアコンを取り付ける工事屋さんにもしっかりとした対応をしていただく必要があるからです。

 つまり、お客様に満足していただき、お客様とのあいだに本当の信頼関係を築くには、自社だけでは成り立たない時代になったということなのです。

 ですから、全体最適を考えるときは、ボトルネックからスタートして、今を一生懸命やっていくことを続けなければならない。それができれば、どんな問題でも解決に近づいていくし、皆さんが望む通りの企業になったり、心から望む人生を送っていけるのではないかというふうに僕は思っています」