妻が原因不明の体調不良に
仕事も休みがちになったNさん(48歳)

脳梗塞?
妻の不調が始まったのは45歳だった

 製薬会社にMR(製薬情報担当者)として勤めるNさんが残業を済ませて自宅に戻り、夜食を食べているときのことだった。湯のみ茶碗を差し出したNさんの妻が突然「うっ」といううめき声をだして、床に茶碗を落としてしまったのだ。

 「あなた大変…!左手がしびれる」

 左手だけがしびれるのは、典型的な脳梗塞の前兆だ。Nさんは「救急車を呼ぶか?頭は痛くないか?いつからだ?」と矢継ぎ早に言葉を投げかけた。

 「救急車には乗りたくないわ。最近よく左手がしびれるし、頭も時々痛いし、ドキドキして目が覚めてしまうの。明日病院で検査するわ」と青白い顔で答えた。

 それが全てのはじまりだった。

綿密な検査を行うも
検査結果は「異常なし」?

 Nさんはその夜、妻の寝顔を見ながら途方に暮れた。結婚が遅かったNさん夫妻の子供は、まだ2人とも小学生。昨年他界した母親が、昼間働きに出ていた妻に代わって、家事も育児も町内会の役員までもこなしていた。

 妻は、母親が亡くなったのをきっかけに長年勤めた会社を辞め、専業主婦になったが、その頃から笑顔を見せることが少なくなっていた。

 Nさんはもし妻が倒れたら、2人の子供をどう育てていいのかわからなかった。仕事を続けながら妻の看病をしていく自信もなかった。翌朝、「妻の具合が悪いので会社を休みたい」と上司に告げ、病院に車を走らせた。

 相当待たされた後、ようやく診察室に入った妻は、循環器の医師に涙を浮かべながら訴えていた。

 「先生ドキドキして夜眠ることができません。また歩道橋や駅の階段を上るだけで動悸がします。しびれは1ヵ月前から左手だけに感じます。頭も突然締め付けられるように痛くて…」

 その後、妻は心電図、レントゲン、血液検査、脳のCTの検査を受けた。Nさんは、待合室でそわそわしながら待った。

 しかし、検査結果は全て異常なし。医師は言った。