全日制高校から通信制高校へ
高校に入学早々、体調不良が続き欠席がちになり、全日制での進級が危ぶまれた朝倉将太さん。そこで、朝倉さんが選んだのは、通信制高校へ移ることだった。
環境を変えたことで体調は徐々に戻り、バドミントン部への入部など、生活は新しい形で動き始めた。そんな高校1年の秋、インターネットの記事でたまたま「資格」に関する記事を目にし、「簿記」という存在を知った。
「高校生ではおそらく出合うことのない言葉でしょう。社会の役に立つ仕事だと知ったことでがぜん興味がわきました」
気になった翌日に書店へ向かい、テキストを購入。その日から簿記の「独学」が始まった。
「通学が週に2日だけだったので、自宅で部屋にこもって簿記の勉強に打ち込みました。僕は周囲に人がいると気が散りやすいので、自室にこもって集中できる環境は大きな強みになりました。集中して学習できる時間を持てたのは、通信制のメリットだったと思います
日商簿記2級の挑戦
「簿記について知っている人は周りにいませんでしたが、テキストを信じて問題をひたすら解きました」
朝倉さんは決して学習環境が整っていたわけではない。商業科ではなく普通科で、簿記を専門的に学ぶ機会はほとんどなかった。定時制や通信制の生徒との交流もかぎられ、簿記の話題を共有できる相手も少ない。学校内にも簿記を詳しく教えてもらえる環境はなかったという。それでも、朝倉さんは不安よりも「やってみたい」という気持ちが勝ったそう。
最初に受けたのは、3級ではなく2級だった。勉強を進めるうちに、「最初から2級でも合格しそうだ」と感じたからだ。普通なら無難に段階を踏むところを、朝倉さんは自分の直感を信じて一級飛ばした挑戦を選んだ。そして、最初の試験で日商簿記2級に合格する。
努力が確かな結果として返ってくる、その手応えを朝倉さんは初めてつかんだという。ここで得た達成感が、次の目標である日商簿記1級挑戦への原動力になった。
全商簿記1級満点合格
朝倉さんは日商簿記1級を目指す過程で、簿記の基本確認をしたいと考え、商業高校生が主に受験する全商簿記1級※にも挑んだ。
※全商簿記:全国商業高等学校協会主催の簿記検定。高校で学ぶ簿記の基礎・基本の到達度を確認するもので、より実践的な日商簿記とはその位置づけが異なる。経理や会計の仕事に就くことを目指す商業高校の生徒が多く受験している。
商業簿記の勉強過程では、計算問題の中で集計項目が多く難解とされている税効果会計で、解答を容易にするオリジナルの計算フォームを作った基礎固めを徹底していた朝倉さんは、全商簿記1級にも十分に合格できるという自信を持っていた。だからこそ、受けるからには「満点」を狙おうと考えたという。
「すでに日商簿記2級に合格していましたし、全商簿記1級の満点合格があれば、大学進学にも有利に働くと考えました」
結果は、200点満点での合格。満点合格者は全国で6人だけだった。学校に報告すると、地元紙にも取り上げられた。
その後、朝倉さんは駒澤大学経済学部へ推薦枠で進学。通信制高校では卒業後は就職する生徒が多く、進学しても専門学校や短大が中心で、4年制大学へ進む人はごく希である。
「自分の進路を切り開いてくれたのは、簿記なんです」
日商簿記1級は独学で取り組むも、工夫で対応
そんな朝倉さんの日商簿記1級の受験対策は、量をこなすだけの勉強ではなかった。
「教材は市販(TAC出版)の簿記の教科書と問題集を選びました。併せて直近14回分の本試験問題が収録された過去問題集を4周しました。最初のころは正答率が低かったのですが、繰り返し解くうちに高くなってきました。弱点をなくすことが合格の近道だと考えています」
どの問題でも満点で解ける状態を目標に置いた朝倉さんの勉強法は、どうして間違えたのかを分析することであった。誤答したとき、それが知識不足なのか、理解不足なのか、あるいは不注意によるものかを分けていく。さらに、各問題の論点がテキストのどこに対応するかを青ペンで書き込み、復習の導線をつくった。間違えた際、テキストのどこへ戻ればよいかがすぐ分かるようにしたのだ。朝倉さんは、市販教材をそのまま使うのではなく、自分専用の教材に作り替えていたのである。
「そうすることで、あいまいになっていた知識や忘れていたことを徹底的に確認できますから」
この緻密さが、日商簿記1級合格につながった。勉強時間は1日10時間を超える日もあったという。
「試験が近づくと、1日10時間くらい勉強することもザラでした。起きている間は、ずっと勉強しているようでした。ただ、夕食のときだけは家族そろっているので、くつろいで世間話ができ、気分転換になっていました」
挫折と計画を立て直す力
大学進学を決めると同時に、次の目標は見えていた。公認会計士試験の合格だ。
高校卒業前の1月には、公認会計士試験に向けた勉強を始める。少しでも早くスタートし、大学2年生までに合格するという目標を立てていた。
駒澤大学で在学中に公認会計士試験に合格したもっとも早い前例が3年生だった。朝倉さんは「2年で合格すれば記録になる」と密かに思っていたそうだ。
しかし、計画通りには進まなかった。
簿記資格の取得を目指す同級生たちは、大学入学後に基礎を学び始め、これから日商簿記2級を目指す段階にいた。すでに日商簿記1級に合格していた朝倉さんにとって、大学の講義で扱う簿記は基礎的な内容に感じられた。次第に講義から足が遠のき、友人と過ごす時間が増えていった。上京して初めての一人暮らしということもあり、勉強のリズムは少しずつ崩れていった。
公認会計士の試験は短答式試験への合格後、論文式試験に進む仕組みである。短答式試験は年2回実施されるが、論文式試験は年1回しかない。そのため、5月の短答式試験で合格点に届かなければ、その年8月の論文式試験には進めない。
朝倉さんは大学2年の5月に受けた短答式試験で、合格点にわずかに届かなかった。当初描いていた「大学2年で合格する」という計画は、ここで崩れることになった。
それでも、朝倉さんは勉強のリズムを立て直し、同じ年の12月に行われた短答式試験に合格。翌年8月の論文式試験も突破し、公認会計士試験合格を達成した。
「その年、駒澤大学の3年生で公認会計士試験に合格したのは、僕を含めて2人でした。大学内での最速記録更新はできませんでしたが、在学中に合格できた意味は大きいと思っています」
公認会計士試験は通信講座で挑む
公認会計士試験の勉強は、簿記とは比べものにならないほど範囲が広い。短答式試験では財務会計論、管理会計論、監査論、企業法を学び、さらに論文式試験では租税法や選択科目も加わる。これまでのように独学で挑むのには限界があった。
朝倉さんは高校卒業前から公認会計士試験に向けた勉強を始めたが、地元には通学型の資格スクールがなかった。そのため、CPA会計学院の通信講座を選んだ。講義動画で全体像をつかみ、テキストで論点を確認し、問題演習で理解を固めていった。
「通信講座を受けてよかったのは、たとえば暗記しなければいけないことを語呂合わせで覚えるなどの方法を学べたことです。なかなか覚えられない言葉をリズムで覚えられたのは効率的でした」
「講座に参加したことで試験全体を俯瞰して捉えられるようにもなりました。これは独学だけでは分からなかったんじゃないかと思います」
独学では、目の前の論点を一つずつ追うことはできても、試験全体の中で何を優先し、どこまで理解すべきかをつかむのは難しい。通信講座を通して試験全体を見渡せるようになったことは、朝倉さんにとって大きな助けとなったようだ。
公認会計士試験では、簿記で身につけた計算力だけでは足りない。企業会計のルール、原価計算、監査の考え方、会社法など、幅広い知識を正確に理解する必要がある。短答式試験では知識を素早く判断する力が問われ、論文式試験では、答えだけでなく、なぜそう考えるのかを文章で説明する力も求められる。
朝倉さんは講義を聞いて終わりにせず、テキストに戻って論点を確認し、答案練習※や模擬試験で本番に近い形の演習を重ねた。日商簿記1級で身につけた「間違えた理由を確認し、弱点をつぶす」学び方は、公認会計士試験でも生きた。
※答案練習:予備校などで行われる実践形式の演習。略称は答練。
日商簿記1級合格までに費やした勉強時間はおよそ1,000時間。公認会計士試験合格までに、さらに2年8か月、約2,200時間を要した。合格者の平均勉強時間が3,000時間といわれている中では、かなり短い勉強時間で合格できたといえる。
まとめ:スタートがどこでも、道は切り開ける
通信制高校への転校は、朝倉将太さんにとっては前向きな選択であった。自分の現実に向き合い、最適の環境を選び、その中で力を伸ばすための再出発だったのである。簿記との出会いは、大学進学だけでなく、その先の道筋も切り開いていくことだろう。
通信制高校からの挑戦というと、どうしても逆境や苦労ばかりに目が向きがちだが、朝倉さんの歩みが示しているのは、それだけではない。自分に合う場所を見つけ、自分に合うやり方で積み重ねれば、道は開けるということだ。偶然出会った「簿記」という二文字は、朝倉さんにとって、人生の方向を変える扉だった。
「いまは会計士としての実績を積んで、社会のために役立ちたいですね。将来的には、独立開業も視野に入れたいです。地元の人たちのための公認会計士になるのもいいかなと考えています」
朝倉さんが見据えるのは、資格を取ることだけで終わらない、その先の働き方である。スタート地点がどこであっても、自分に合う環境と学び方を見つければ、進路は切り開ける。朝倉さんの挑戦は、これから将来を考える若い世代への力強いエールとなるだろう。
日商簿記の資格とは?
日商簿記(日本商工会議所主催簿記検定試験)は、企業の経営成績や財政状態を記録・計算するための資格だ。お金の流れや経営状況を数字で読み解く力が身につくため、経理担当者だけでなく多くの社会人にとって必須の資格とも言える。
1級、2級、3級の3段階があり、目的や仕事内容に合わせて、段階的に取得するのが一般的。
日商簿記の主な資格講座(PR)
| 通信講座名 |
スタディング 簿記講座 |
ネットスクール 日商簿記 コース |
CPAラーニング 簿記/会計資格コース |
|---|---|---|---|
| 特徴 | 動画、音声、問題演習を組み合わせて、効率よく対策 | 人気の簿記書籍をベースにした講義と、質問環境も整った講座 | 完全無料で始められる動画サービス |
| 質問対応 |
チケット制(1枚1,100円/1問) AIマスター先生による質問機能あり |
SNS「学び舎」で質問ができるほか、電話・メールで質問可 | 簿記AIエージェントが回答(CPAの情報限定) |
| 1授業の時間 | 15分前後の小間切れ講義 | 約30分のオンデマンド講義が4本1セット | 30分~60分程度 |
| 合格実績 |
簿記1,2,3級講座合計1,285名(2024年度) |
- | - |
| 料金 |
簿記2級合格コース:19,800円 |
日商簿記2級標準コース:41,000円 日商簿記1級9か月合格コース:123,000円 |
日商簿記3級、2級、1級:無料 |
| 公式サイト |
公認会計士の資格とは?
公認会計士は、企業や団体の財務諸表が適正かどうかを、独立した立場でチェックする「監査」を主な業務とする国家資格だ。監査法人への就職、企業内会計士、コンサルタント、独立開業など進路の幅も広い。
試験内容は、短答式試験と論文式試験で構成され、短答式試験は年2回、論文式試験は年1回実施される。合格率は7%から10%台という難関資格で、2025(令和7)年試験の最終合格率は7.4%だった。学習範囲が広いため、独学で挑む人は少なく、大手専門学校や通信講座を利用し、講義、教材、答案練習、模試を組み合わせて合格を目指す受験生が多い。
公認会計士資格の主な資格講座(PR)
| 通信講座名 |
CPA会計学院 |
スタディング 公認会計士講座 |
クレアール 公認会計士講座 |
|---|---|---|---|
| 特徴 |
各科目を複数の講師が担当しており自分に合った講義を選べる。講師、公認会計士試験合格者チューターが常駐し、いつでも質問・学習相談が可能 |
マルチデバイス対応で、場所を選ばず勉強できる。低価格であるほか合格御祝い金(最大3万円)も用意。AIによる問題復習機能もある |
映像配信」と講義音声で学習を進めるほか、答練問題・資料はダウンロードしてプリントアウト可能。担任制度や毎日実施の質問会でサポートも |
| 学び方 |
通学・オンライン |
オンライン | オンライン |
| 授業の特徴 | 講義動画だけでなく、ライブ講義も実施 | 講義は1動画5分~で細切れで視聴でき、スキマ時間にも視聴可能 | 講義動画は1コマ約30分で、再生速度は0.5〜2倍まで6段階に変速可能 |
| 合格実績 |
1,092人(2025年) |
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| 料金 | 1年スタンダードコース(通信講座)が730,000 円など。 | 2028年合格パックは124,800円など。冊子付の場合+7万円。 | 2年スタンダード合格コース初学者対象(Web通信)が540,000円など |
| 公式サイト | 公式サイト |
