「魚を食べると頭が良くなる」は本当か?
これを食べたら頭が良くなるーーそんなミラクルな食材があったら、何としてでも手に入れたいものですね。残念ながら「食べるだけで必ず成績が上がる」といえる食材はありません。しかし、人間の脳と食事には深い関係があります。記憶力や集中力をはじめ、脳の機能を高める食事の取り方について解説していきます。
「魚を食べると頭が良くなる」と聞いたことがある方は少なくないでしょう。これは、イワシやサバ、サンマなどの青魚に含まれるオメガ3脂肪酸「ドコサヘキサエン酸(DHA)」と「エイコサペンタエン酸(EPA)」の働きに由来するものです。DHAは、脳の神経や細胞膜を構成する成分で、脳の発達や認知機能の維持に重要な役割を果たします。EPAも細胞膜を構成する成分ですが、体内の炎症反応の調整などに関わっています。
デンマークの健康な8〜9歳の子ども199人を対象にした研究で、魚の摂取と認知機能の関連を証明した研究を紹介します。この研究では、脂の多い魚を1週間当たり約300g摂取する群と、同様に鶏肉を摂取する群(対照群)にランダムに分け、約4カ月介入を行いました。
介入時と終了時に注意力、処理速度、記憶、感情、行動を評価したところ、魚摂取群は、鶏肉摂取群より総合認知機能のスコアが0.17ポイント改善しました。これは注意力課題の誤答の減少、認知的柔軟性を評価する試験結果向上、親が評価した内在化問題(子どもの強さと困難さに関する質問票)の改善によるものです(※1)。
※1 Teisen MN, Vuholm S, Niclasen J, Aristizabal-Henao JJ, Stark KD, Geertsen SS, Damsgaard CT, Lauritzen L: Am J Clin Nutr, 112: 74-83, 2020
脳の海馬に存在する「BDNF」とは?
この他にも、DHAの摂取と学習の成績や認知機能との関連については、多くの実験や疫学調査がありますが、有意差は認められなかったとする研究報告もあります。しかし、脳の発達に関する働きから考えても、青魚は積極的に取りたい食品といえるでしょう。
なによりも「お魚は頭の働きを助けてくれるよ」といった声かけは、子どもにとって気持ちの上でも心強い後押しになるはずです。
今年はサンマが記録的な不漁と言われ、秋になっても価格の高騰が続いています。魚を食べる習慣は現代において減ってきていますが、サバ缶やイワシ缶などの缶詰、イワシの佃煮などの保存食も活用して、こまめに青魚を取るようにしたいですね。
脳の働きを高めるとされている食材は、他にどんなものがあるでしょうか。
卵に多く含まれる「レシチン」はリン脂質の一種で細胞膜の主成分です。レシチンは体内でコリンに変わり、神経伝達物質のアセチルコリンが合成されます。アセチルコリンは神経細胞のつなぎ目で情報を伝達し、記憶力の向上を促したり、副交感神経の働きや骨格筋の収縮にも関与します。
神経伝達物質の材料となるコリンが不足しないために、レシチンを含む食材を意識して取りましょう。卵の他には、大豆やレバーなどもおすすめです。
クルミやアーモンドなどのナッツ類は、ビタミンEを多く含みます。ビタミンEには抗酸化作用があり、脳の神経細胞の細胞膜を酸化ストレスから守ってくれます。体の血流をスムーズにして血行を促進する働きもあります。
チョコレートなどに含有されているカカオポリフェノールが認知機能に及ぼす影響については、多くの研究が行われています。健康な成人を対象にしたものが多いのですが、記憶の維持や実行機能に好ましい影響を示した報告が多くあります。また、カカオポリフェノールは、"脳の栄養”と呼ばれる「BDNF(脳由来神経栄養因子)」に関連する作用も研究されています。BDNFは、脳内の「海馬」(記憶や学習に関わる領域)に多く存在し、神経細胞の発生や成長を促すタンパク質です。
間食に高カカオのチョコレートやココア、ナッツ類を取り入れて、お子さんの受験勉強を応援しましょう。
