経営難に陥っていた不動産ファンド大手のパシフィックホールディングスが10日、会社更生法の適用を申請した。
グループ全体の負債総額は約1940億円。パシフィック破綻までの道筋は迷走を極めた。昨年9月末、支援先として当て込んでいた大和証券グループ本社との資本提携話が事実上破談、これまでかと思われたが、社外取締役の一人が中国からの出資話を持ち込んだことでひと筋の光明が差す。
アドバイザーに就いたのは元産業再生機構COOの冨山和彦氏。自らが経営するコンサルティング会社の子会社を受け皿にし、中国企業の投資家が500億円弱を出資するスキームを作成、決算期末ギリギリの昨年11月末に発表し、信用不安を封じ込めようとした。
市場は懐疑的だったが、一部新聞が具体名を挙げて10社が資本参加するとスクープし、株価は急騰に転じる。
だが、中国ファクターが逆に迷走を加速させる。まず、12月末に払い込み予定だった270億円は、中国政府の許認可が下りないとの理由で延期。年が明けた1月27日には2008年11月期決算で債務超過に転落、監査意見も不表明となり、中国側が契約違反を主張。出資話は白紙に戻る。
じつは、中国の投資家の正体は、10社ではなく1社。しかも背後には政府系ファンド、CIC(中国投資有限責任公司)の姿がちらついていた。将来リート市場を創設するため、パシフィック傘下のリートを運営して勉強するのが狙いだったと見られる。
パシフィック側は中国側と協議を続けるとしたものの、当初設定した増資期限が2月27日に迫るなか、事態は打開の糸口を見出せないでいた。金融筋によると、パシフィックは覚悟を決め、23日には更生法手続きの書類を携えて、主力の取引銀行に説明に回ったという。ただ、主力行の一行から「(中国と交渉中の)冨山さんの動きを見守ろう」という提案があったため決断は先送りされた。
ところが、中国側の要求は「支援するという念書が欲しい」。ただでさえ中国側の出資額では足りないと見られていたのに、銀行側にとって、もはやのめるはずもない。
こうして命運が尽きたが、破綻までに思わせぶりなニュースリリースを連発し、株価が乱高下したことで、相場操縦を問う声も出ている。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 鈴木洋子)