「あなたの組織は、計画と準備の沼で溺れていませんか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」に共通する時代遅れな文化や慣習があると気づきました。
それを指摘したのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』。社員、取引先、お客様をうんざりさせる「時代遅れな文化」を指摘し、現場から変えていく具体策を紹介。「まさにうちの会社のことだ!!」「これって、おかしいことだったの!?」と、多数の反響があり話題に。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「準備を重視しすぎる組織」の問題点について指摘します。
石橋をいつまでも叩き続ける組織
先日、ある大企業の新規事業担当者の声を聞く機会があった。
その企業では、新規事業とは何かを定義するための議論が1か月以上も繰り広げられていたそうである。
ようやく出てきた定義は、「既存の技術や顧客基盤の利活用を検討する」「ブランドイメージを損なわない」といった点を考慮した、保守的で新奇性もチャレンジスピリットも感じられないものだったと、その担当者は嘆いていた。こうしているうちに他社に追い越されるのではないかと懸念も示していた。
準備にとにかく時間をかける。認識違いがおこらないよう、曖昧さはとにかく排除する。何か新しいことを始めようとするとき、このように定義や準備に時間をかける組織は少なくない。
入念すぎる準備は失敗へのプレッシャーを高める
石橋を叩きすぎるのも考えものだ。時代に取り残されるだけでなく、失敗を許さない空気感や挑戦を推奨しない体質をつくってしまう。
もちろん人命に関わる、社会的インパクトが大きいなどの領域や業務においては慎重を期する必要もある。しかし不確実性の高い現代では、入念に準備をしても予期せぬ出来事は起こる。
どうせ失敗するなら早い方がいい。その方がリスクも小さく済み、再度の挑戦にもすぐに取り組める。
何かを始めるときも、3つの「る」で
別の項目で、仕事を減らすための3つの「る」を紹介した。やめる、振り返る、変えてみる。この3つだ。
これは何かを始めるときも同じだ。「やめてみる」を「やってみる」に置き換えて実践してみよう。とりわけ「振り返る」は、実績や前例のないことを始めるときに有効だ。
「定義にかける時間がもったいないので、まずはやってみましょう」
「その後で、定義を検証する振り返りのミーティングをしてみませんか」
振り返りポイントを設けた上で、「やらせてください」と主張しよう。「学習も兼ねて」「新たな知見を増やすために」と一言添えると説得力が増す。
外部の経験者や実践者に伴走してもらうのもよい。
過去の成功体験や体験談をもとに話をしていても、新しいものごとの定義は進まないし、確かな判断もできるわけがない。
まずは体験してみて、そこから新たな知見を得る。後から意味や意義を考える。それが組織の学習プロセスだ。
・3つの「る」で、「まずはやらせてください」と提案する
・振り返りポイントを明確にし、体験を知見に変える
・不安なら外部の経験者や実践者に伴走してもらう
(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)