投資家にとって合理的な運用常識を説明する際に、理解してもらいにくいポイントが4つある。

 長期投資とリスクの関係、ドルコスト平均法の無効性、損切りの誤解、アクティブ運用の事前選択の困難だ。一般論として素人の直観が常に悪いわけではないのだが、知識的な意味での素人が直面する「バカの壁」的な障壁がある。

 投資結果の不確実性は時間とともに拡大するし、不確実性を負担するには超過リターンが必要だから、平均的にプラスのリターンを持っていて長期投資で元本割れの確率が下がることをもって、単純に「有利」とは言えない。

 ただし長期投資は有利ではないが不利でもないし、手数料コストの面では有利だが、長期投資に「絶対性」を求めたい信者さんはこの程度では満足しない。取るべきリスクの大きさが、投資期間ではなく、投資主体のリスク負担力で決まる点を理解してほしいのだが、「長期投資でリスクは縮小する」という誤った刷り込みが邪魔をする。

 ドルコスト平均法も過剰に信ずる人がいる。買い終わったリスク資産に有利不利はないので大きな実害はないが、買い方としてこれを選択すると、機会費用の損、過大な手数料、1資産への過剰な集中が起こりやすい。貯蓄法として積み立てが実行しやすいことと投資の合理性は別問題なのだが、自分の買値に対する不要なこだわりが理解を邪魔するようだ。

 買値に対するこだわりでは、一定率の値下がりには機械的な損切りが必要だという誤解も根強い。先日新聞に経済評論家とFP(ファイナンシャルプランナー)の記事広告の対談が載っていたのだが、この中で「金融リテラシー」の必要性を強調する経済評論家さんが、株式投資を勧めながら「損切りはポートフォリオの総額の2%を超えたら、無条件で売るべきです」と言っているのを見て、ひっくり返りそうになった。