
神奈川県川崎市で行方不明になっていた岡崎彩咲陽さん(20)が遺体で見つかった事件で、県警はストーカーの白井秀征容疑者(27)を死体遺棄容疑で逮捕した。岡崎さんの遺体は焼かれて一部白骨化し、白井容疑者の自宅で発見された。県警は当然に殺人容疑での再逮捕を見据えて捜査しているが、立件はそれほど簡単ではない。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
焼かれた遺体
助けられなかったか
本稿に入る前に、まずは神奈川県警のずさんな対応で命を絶たれた岡崎さんのご冥福をお祈りしたい。
事件は端的に言えば、県警がストーカー被害を訴えていた岡崎さんを放置し、白井容疑者の犯行を手助けしたとさえ言える。筆者も全国紙で30数年にわたり事件を中心に取材してきたが、これほどずさんな警察の対応はあまりお目にかかったことはない。
これからの捜査だが、事件は誰の目に見ても白井容疑者が、岡崎さんを拉致して何らかの方法で殺害。証拠隠滅のため遺体を焼いて、自宅に隠していたという構図は明らかだろう。
現時点での容疑は、昨年12月20日~今年4月30日(筆者注:行方不明になった日から遺体が発見された日)、川崎市川崎区大師駅前2丁目の自宅に岡崎さんの遺体を遺棄したとされることだ。岡崎さんの遺体は、ストーカー規制法違反容疑での家宅捜索で床下にバッグに詰められた状態で見つかった。
当たり前に考えれば遺体を焼いているので「死体損壊罪」と、白井容疑者がつきまといを認めているので「ストーカー規制法違反罪」は立件できるだろうが、問題は殺害方法を立証できるかどうかだ。なぜなら、現時点で死因は「不明」だからだ。
家宅捜索で床下まで
引っ剥がす理由
筆者の取材と後輩である全国紙社会部デスクによると、昨年春ごろ、岡崎さんと白井容疑者の交際が始まった。そして同6月、DVが始まったようで、岡崎さんが県警に通報している。同9月には岡崎さんの父親から「娘が暴力を受けた」との被害届が出されていた。
同11月には、白井容疑者が岡崎さんの姉宅で待ち伏せしていたため、県警が口頭注意。12月には岡崎さんから「(白井容疑者が)家の周りをうろついていて怖い」など計9回の通報がありパトロールはしていたが20日、岡崎さんは行方不明になった。県警は3日後、行方不明届けを受理した。
そして今年3月25日、県警は白井容疑者から聴取し「勤務先に会いに行った」とストーカー行為を認めていたが、家宅捜索などはしていなかった。ストーカー被害を訴えていた女性が行方不明になって、加害者がストーカー行為を認めていたのに、そのまま放置していたわけだ。