人が辞めるメカニズムを知る

 新人の戦力化は、営業マネジャーにとっても最重要テーマです。ところが、実際の営業現場では、戦力化するどころか、すぐに会社を辞めてしまう若手社員が後を絶ちません。数年前から「若者の早期離職」が社会問題となっていますが、営業組織では特にこの傾向が強いように思われます。

 マスコミの報道を見ていると、最近の若者は「根気がない」「理想を求めすぎる」「自分探しを続けている」など、若者に対して否定的な意見が多いようです。しかし、私は必ずしもそうは思いません。私のコンサルティング先を見ていても、「若手が定着する職場」と「若手が定着しない職場」がハッキリ分かれているからです。つまり、若手社員がすぐに辞めてしまうのは、若手社員よりも職場の方に大きな問題があるのではないかと考えています。

 では、なぜ若手社員は「会社を辞めたい」と思うのでしょうか。一言でいえば「今の仕事では将来の見通しが立たない」からです。その大きな理由として「今の仕事をマスターできるイメージが持てない」とか「職場の先輩や上司のようになりたくない」などが考えられます。人は先行きが見えないと不安になり、モチベーションを落とします。仕事で生計を立てているビジネスマンにとって、今の仕事で将来の見通しが立たないことほど不安なものはないでしょう。

 日本人の多くは履歴書が傷つくことを嫌いますから、誰しも好き好んで会社を辞めているわけではありません。また、本人が口に出して言う「退職」の理由と、本当の理由とは異なることが大半です。部下を持つ立場のマネジャーは、そこのところを強く認識しておく必要があるでしょう。

辞めた若手社員の本音とは?

 私の知っている広告代理店でこんなことがありました。将来を期待されていた入社3年目のA君が、急に「会社を辞める」と言い出したのです。理由は、実家の父親が体調を崩したので看病したいということでした。そのため、実家に戻って公務員試験を受けるのだと言います。事情が事情だけに会社側も引き止めることができず、結局A君は退社してしまいました。

 ところが後日、退社の本当の理由は「課長との営業同行」にあったことがわかりました。