昨年12月28日に、労働政策審議会(労政審。厚生労働大臣直轄の諮問委員会)による労働者派遣法改正に向けた答申の内容が明らかになった。そこには、派遣労働者保護を目指しながらかえって雇用機会を縮小させるような案が盛り込まれている。国会に提出されようとしている同改正案の問題点と課題に迫った。
年末年始にかけて、連日のようにテレビ画面に映し出された派遣労働者。不況で職を失い、家を追い出され、ネットカフェや路上で暮らす。東京・代々木のオリンピックセンターで受付を待つ失業者の映像を見たある機械メーカー幹部の心中は複雑だ。
「“派遣切り”に遭った人には同情するが、今回の派遣法改正案には納得できない。(単純労働を)派遣で対応できないとなれば、海外で生産するしかない」
リーマンショック後の急激な輸出の落ち込みや景気後退で、真っ先に切られたのが派遣労働者だった。自動車や電機など製造業で働く派遣労働者の大量解雇は、さまざまな波紋を投げかけた。政権を取った民主党が公約の一つに掲げたのも、労働者派遣法改正だった。
12月28日、労政審がまとめた答申も、民主党のマニフェストに沿ったものだった。
なかでも、注目すべきなのが上に挙げた3つ、(1)登録型派遣の原則禁止、(2)製造業派遣は常用型以外は禁止、(3)日雇い派遣は原則禁止である。
結論からいえば、これらは無用の混乱を招くだけの愚策になる可能性がきわめて高い。リクルートワークス研究所は、派遣法改正によって、約18万人が失職する可能性があるとの試算を打ち出した。