中田堅司課長の部署はとにかく女性が多い。異動してきたばかりの頃は、ちょっとばかり嬉しくないこともなかった。だが、最近ではため息ばかりついている。2人のお局さまがいるせいで、職場の雰囲気は悪くなる一方だからだ。
派閥トップの1人は御仕沖スルヨさん。30代の美人でプライドが高く、いつも取り巻きを従えている。機嫌が悪いと、後輩にあたりちらすので周りはいつもビクビクものだ。もう1人は肝玉加亜子さんで、こちらは入社20年以上のベテラン。気はいいのだが、いつも口うるさく部下の仕事をチェックする。2人が巻き起こすトラブルに、中田課長は翻弄されっぱなしだ。
「新人が御仕沖さんからパワハラを受けたせいで、うつになったといっています。もう辞めてやる、ついでに会社も訴えるって――」
「肝玉さんに、今は忙しいからしばらく有休をとらないように、と言われました。私は自分の仕事はちゃんとやっています。なぜ彼女からそんなことを指図されなければいけないんですか」
――なんでなんだろうなあ。男には、自分の職域を超えて幅をきかせるヤツってあまりいないと思うんだけど……。
2人に聞こえないように、中田課長はまたため息をついた。
お局さまの
餌食になる男性たち
後輩を思うままに操り、職場に君臨する「お局さま」。女性はもちろん、男性にとってもゆめゆめ侮ることのできない存在だ。
ときにトラブルメーカーであり、黒幕であり、あるいは包容力のある「おっかさん」であり――よい意味でも、悪い意味でもその影響力は絶大。なめてかかると、とんでもない痛手を負うので注意が必要だ。
「たまたま前日と同じスーツとネクタイ、似たような柄のワイシャツを着ていたら、年配のお局さまが見とがめ、『ネクタイくらい替えてくればいいのに……』とニヤリ。翌日には数人の女性から『やりますね~』とからかわれました。
おそらく、『部長ったら昨日外泊したらしいわよ』→『だって、いそいそ退社していたわよ。浮気じゃない?』→『あらあ、お盛んねえ』などと話に尾ひれがついて広まったんでしょうね」(教育関連企業 50代男性)
この程度ならまだ可愛いものだが、中には彼女たちの逆鱗に触れ、餌食となる男性もいる。実際、ある男性は、年下のお局さまを怒らせたことがきっかけで抑うつ状態に追い込まれてしまった。