ビジネスマンとシニア夫婦写真はイメージです Photo:PIXTA

平均寿命が伸びる中、定年後に向けての資産形成はますます難しさを増している。実は、年金の繰り下げ受給を行えば、老後100歳までに必要な資産を約2000万円も圧縮できることをご存知だろうか?老後の準備が十分ではなかった人もまだまだ間に合うテクニックを、お金のプロが伝授する。本稿は野尻哲史『100歳まで生きても資産を枯渇させない方法』(幻冬舎新書)の一部を抜粋・編集したものです。

勤労収入、年金収入、資産からの
引き出しをうまく組み合わせよう

 退職後の資産活用期に「勤労収入」「年金収入」「資産から引き出すお金」の3つをどう組み合わせるかは、計画を立てる際の重要なポイントになります。

 これらをうまく組み合わせることで、収入を増やしたり、心持ちを穏やかにしたりすることができるからです。柱になるのは、死ぬまで受け取れる終身年金である公的年金です。活用するカギは、「繰り下げ受給」にあります。

 近年65歳を超えても働いている人が50%を超えていますから、「退職して勤労収入がなくなったら年金収入へとバトンタッチする」といった発想ではなく、「65歳になったら働きながら年金も受け取ろう」と考えている人が多いのではないかと思います。

 そのような中、注目されるようになっているのが、「公的年金の受け取りはできるだけ繰り下げて、受給金額を少しでも増やすことを考えたい」といった意見です。

 ご存じの方も多いと思いますが、公的年金は受給を1カ月繰り下げるごとに、受給額が0.7%ずつ増加します。65歳から70歳まで5年間繰り下げると、受給額が42%(0.7%×60カ月分)増加するのです。2022年からは繰り下げ受給の上限年齢が75歳まで引き上げられ、75歳まで繰り下げれば、なんと84%増となります。

 ちなみに私は2024年に65歳になりましたので、4月に年金の受給開始に関する資料とともに「年金請求書」が送られてきました。このはがきには、4つの受け取り方法の選択肢が記載されています。

10年年金受給を待つだけで
250万円が460万円になる

 その選択肢とは、(1)基礎年金・厚生年金を両方65歳から受け取る、(2)基礎年金のみ65歳から受け取る(厚生年金は繰下げ予定)、(3)厚生年金のみ65歳から受け取る(基礎年金は繰下げ予定)、(4)66歳以降に年金(繰下げ)請求予定、の4つです。

(1)~(3)は希望する項目にチェックしてはがきを出す必要がありますが、(4)を選択する場合にははがきの提出は不要なので、基礎年金・厚生年金をともに繰り下げ受給したいなら、はがきを出さなくてOKです。