コンビニエンスストアの弁当は日持ちが悪い──。その常識を覆す“チルド弁当”が、この秋、本格的にお目見えする。従来の20度程度での温度管理ではなく、5度前後で冷蔵保存することで、約1日だった消費期限が倍以上に延長できる。ファミリーマートは9月に全店展開を達成、セブン-イレブン・ジャパンは11月に本格導入を始め、来春をメドに全店で展開する予定だ。

 低温保存の弁当は、am/pmジャパンが“冷凍弁当”を1994年から販売しているが、大手他チェーンへの広がりはなかった。

 しかし、「鮮度や食感を高めるなど、もっとおいしいものを作りたい」(赤荻達也・ファミマデリカ食品部長)、「高齢化、女性の社会進出、小売り店の減少などの社会の変化に対応した、より身近に利用してもらうための、消費期限の長い商品が必要」(セブン)といったそれぞれの思惑を実現するため、チルド弁当の開発に踏み切った。

 両社とも、最大のネックはご飯の食味の保持だったが、技術革新で“商品化”にこぎ着けた。

 開発の着眼点は違えど、「販売戦略が、時間単位でなく日付単位で練れるようになり、いろいろ工夫ができる」「廃棄の負荷が減るので品揃えがしやすい」など、消費期限が延びるチルド弁当への加盟店の期待は、両社共にある。加盟店にとって、廃棄をなくすのは難しい。品切れは販売機会ロスを招くうえ、一般的に、商品はたくさん並んでいたほうが売れやすいからだ。

 今年6月に、セブンが公正取引委員会から独占禁止法違反の排除措置命令を受けてから、食品廃棄への関心が高まっている。しかし、「正価販売は商売の基本」(加盟店オーナー)。利益圧迫やブランド価値低下などの恐れがある見切り販売は、しないに越したことはない。あらゆる面から廃棄低減の努力が求められているのだ。実際、チルド弁当の効果は導入店で出ており、ファミマは弁当で約10%、セブンは弁当類全体で10%、売り上げが上がっているという。

 メリットは、売り手側だけにあるのではない。消費者にも、品揃え増による選択肢の拡大や、消費期限延長による買い置きの可能性などが見込める。

 チルド弁当などの、“おいしい”を前提とした、本部、加盟店、消費者の“三方よし”の商品攻勢は、今後ますます強まるだろう。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 新井美江子)

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