会食や忘年会、クリスマスや年越し、正月の集まりなど、食事の管理が難しい年末年始。食べ過ぎ、体重増加が気になる人にぜひ読んでほしい1冊が『英国の専門医が教える 減量の方程式』だ。
著者はオックスフォード大学医学部を首席卒業後、食欲や体重管理の研究でイギリスを代表する減量専門医のサイラ・ハミード氏。イギリスで深刻化する肥満人口増加を食い止めるべく、「フル・ダイエット」と呼ばれる減量プログラムを考案。参加者たちは平均16キロ減量、糖尿病の改善、血圧低下など、科学的にめざましい効果が実証された。
ついに刊行される日本語版の本書から、一部を抜粋して特別にお届けする。
「脂質」を摂っても太るわけではない
減量プログラム開始直後の段階では、参加者から「脂肪を摂ったら太りませんか?」とよく質問されます。私はその度に、答えが「ノー」であることを喜んで説明して、相手を安心させます。
私たちを太らせるのは糖です。肉や魚、オリーブオイル、乳製品、ナッツ類、種子に含まれる天然の脂質を摂っても、太るわけではないのです。
この誤解の大きな原因になっているのが、食べ物に含まれる「脂肪」(脂質)と、私たちの身体の「脂肪」がどちらも「ファット」(fat)と呼ばれているという言葉の問題です。
実際には、身体の脂肪(体脂肪)の正式な医学用語は「脂肪組織」(adipose tissue)と言います。
「脂肪を摂ると太る」という考えから抜け出すため、これからは体脂肪を「脂肪組織」と考えてみてください。
そうすれば、食べ物の中の「脂質」と身体の中の「脂肪」がまったくの別ものであり、言葉の偶然の一致が何十年にも及ぶ混乱をもたらしていることを理解しやすくなるはずです。
脂質を摂るとコレステロール値が上がる?
他に患者からよく尋ねられるのが、「脂肪を食べたらコレステロール値が上がりませんか?」という質問です。脂質を多く摂ると動脈が詰まりやすくなり、心臓発作や脳卒中になるのではないか、と恐れているのです。
しかし、血液検査で測定されるコレステロールは、私たちが食べたものではありません。それは、私たちの体内(肝臓)で作られたものなのです。
コレステロールをどれだけ摂ったかは、コレステロール値にほぼ関係ありません。実際、米国政府の食生活指針では、以前はコレステロール摂取量を制限することが推奨されていましたが、現在では撤廃されています。
また、私はコレステロールに関して患者を安心させられる答えも示せます。なぜなら、私たちの調査研究でも、クリニックの現場でも、本プログラムに従うことで、患者の血中コレステロール値が改善された実績があるからです。
患者たちは、天然の食材に豊富に含まれる健康的な脂質を摂るようになったことで、心臓に良い善玉コレステロールであるHDLコレステロールの値が増加し、中性脂肪(トリグリセリド)の値は低下していました。
中性脂肪は血液中の脂肪粒子で、心臓発作や脳卒中のリスクが高いメタボリックシンドロームに関連しています。中性脂肪値が下がると、これらの疾患の発症リスクは減ります。
彼らは台所から低脂肪食品を一掃し、祖父母の世代が食べていたのと同じ美味しい脂質を摂取しているにもかかわらず、コレステロール値は改善しているのです。
(本稿は、『英国の専門医が教える 減量の方程式』を一部抜粋・編集したものです)