「大企業に就職したい」「海外に行きたくない」――。“安定”を求め、“リスク”を避ける若者が急増している。ネットイヤーグループの石黒不二代代表取締役社長兼CEOは、このような風潮とは正反対の道を歩いてきた。石黒CEOは、四大卒女性の「求人ゼロ」時代のなかで就職し、しかもMBA取得のために職を辞してシリコンバレーへ留学、起業している。一見すれば、現在の若者とは反対に“リスク”にあえて挑んできた石黒社長。そんな社長が起業に挑んだ理由を聞くと、日本の若者たちが“安定”を求めるワケとその問題点が見えてきた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

大企業志向こそリスク!?
私が起業を選んだ理由

――最近の若者は、「大企業への就職志向」が強いと言われている。しかし、石黒社長は大企業に勤めていたにもかかわらず会社を辞め、MBA取得のためスタンフォード大学へ留学した。そして、現地でもあえて就職せずに自ら起業されている。一見すると常に“リスク”と隣り合わせの行動をとられてきたが、なぜこのような選択をし続けてきたのか?

石黒不二代
いしぐろ・ふじよ/ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO。スタンフォード大学にてMBA取得後、シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立し、日米間の技術移転等に従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、ウェブを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。

 確かに日本では、「大企業にいるほうが安全だ」という妄想があり、「1人で起業することは大変」と思われる傾向がある。しかし、1人で起業することのほうが絶対に安全で、リスクは少ないと私は考えている。なぜなら、人に依存することが一番のリスクだからだ。

 何事も自分の判断だけで進めていくことが可能であれば、自分さえ正しく判断すればそのまま正しい結果が返ってくる。しかし、組織の中で人に依存すると、コントロールされてしまうため、合理的でない人が上に立てば自分もとんでもない目にあう。

 また、今が最盛期という産業を選んだり、一番業績が好調な大企業に入ることを「リスクが少ない」と思うこと自体、間違っている。世の中は常に変化していて、新しい技術や新しいサービスが、今あるものを代替していく。

 大企業への就職を選ぶということは、現在の注目企業や注目産業へ就職するということとほぼ同義だと思うが、どんなに最盛を極める産業や企業も成長期からやがて衰退期を迎えることになる。つまり、就職するときに「リスクがない」と判断した企業でも、将来正反対の状況になることも大いにあり得るのだ。環境は変化し続けているため、将来を予測して行動できればいいが、それはとても難しい。

 もちろん、優秀な企業はこれら変化に対して製品やサービスの転換をして、環境に順応していくものだが、この転換は自分の力だけで行えるものではない。実際、この経済不況により、大企業の中には大規模なリストラを行っているところもある。