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政局LIVEアナリティクス 上久保誠人

米国から負担軽減策を引き出した、普天間問題の悪くない決着

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第50回】 2010年6月1日
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 まず、沖縄県の皆さんに謝罪したい。沖縄県の犠牲の上に日本の安全保障が成り立ってきたという事実は、あらゆるテクニカルな議論を超えて重く受け止めるべきものだ。鳩山由紀夫政権の誕生で、初めて沖縄県の過重な基地負担を見直す機会を得ながら、日本国民はほとんどなにもできなかった。申し訳ないことだと思う。

 日米両政府は、普天間基地の移設先を名護市「辺野古」とする共同声明を発表し、鳩山政権はその方針を閣議決定した。06年に両政府が合意した「ロードマップ」に一部修正して着実に実施する。「辺野古」への移設計画の検証・確認を進めるという内容だ。これで事実上、旧自民党政権と米国による「現行案」に戻った。

 しかし、この連載では、鳩山政権の「現行案」回帰は想定の範囲内である(第29回)。そして、「米国とは揉めているくらいがちょうどいい」(第39回)という状況も期せずして出現した。公約違反に対する鳩山首相の政治的責任は重いが、必ずしも状況は悪くない。

米国とは「揉めているくらいがちょうどいい」
の状態が出現した

 繰り返すが、確かに米国は06年の日米合意にほぼ沿った形の共同声明を発表できた。しかし、鳩山政権によって沖縄の基地反対運動は激化し、辺野古移設は沖縄の同意なしには現実に動けなくなった。普天間基地固定化は米国の望むところでもない。米国は沖縄に対する「負担軽減策」をより真剣に検討せざるを得なくなった。

 これはまさに「日米は揉めているくらいがちょうどいい」状況である。実際、共同声明には、06年日米合意より踏み込んだ「負担軽減策」が盛り込まれた。

 米軍の訓練移転先として「鹿児島県徳之島の活用や、グアムなどへの移転の検討」が新たに加えられた。米軍嘉手納基地の騒音軽減、沖縄本島東部沖のホテル・ホテル訓練区域の使用制限の一部解除なども入った。海兵隊グアム移転は、沖縄に残留する要因の部隊構成の再検討が明記された。そして、「嘉手納基地以南の土地返還」について曖昧な表現が「キャンプ瑞慶覧と牧港補給地区の一部を早期返還の優先分野」と、より具体的になった。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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「大物政治家に話を聞いた」「消息通に話を聞いた」といった大手マスコミ政治部の取材手法とは異なり、一般に公開された情報のみを用いて、気鋭の研究者が国内・国際政局を分析する。

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